2021年ARTnews人気記事ベスト10:ジブリの失敗作や農婦像の炎上も
2021年、世界中でコロナ感染の波が押し寄せたり収まったりする中、アート界にもさまざまな出来事があった。NFTが日常的な話題となり、考古学の新発見が歴史認識を深め、物議を醸した美術館が新たな一歩を踏み出し、あらゆるタイプの作品が激しい議論を呼んだ。
こうしたニュースを伝える記事のうち、最も注目を集めたのは何か。以下、2021年のARTnews人気記事ベストテンを紹介する。
10.求人広告が物議を醸したインディアナポリス美術館のトップが辞任
インディアナポリス美術館が出した館長職の求人募集が、全米に論争を巻き起こした。問題とされたのは、「伝統的な、白人を中心とする観客のための美術館」を率いることのできる人物という募集要項の文言だ。ほどなく、同館館長のチャールズ・ベナブルが辞任。理事会は、「私たちの誤った行為で皆様を失望させてしまったことを謝罪します」と表明している。
元記事:Indianapolis Museum of Art President Resigns Following Job Posting Centering ‘White Art Audience’
9.レオナルド・ダ・ヴィンチの子孫が生きていたことが判明
レオナルド・ダ・ヴィンチの生涯とその芸術は多くの謎に包まれているが、その一つが彼の家系図だ。だが、ダ・ヴィンチの子孫にあたる14人の男性が特定されたとの研究論文が、2021年になって発表された。研究者の一人は、「失われた古代のモザイク画を一片一片つなぎ合わせ、どんな絵柄だったのかを見出していくような気分だった」と語っている。
元記事:New Research Uncovers Leonardo Da Vinci’s Living Descendants
8.ARTnews トップ200コレクター2021
2021年で32回目を迎えた「ARTnewsトップ200コレクター」は、世界で最も影響力のあるアートコレクターのリストだ。今年新たにランクインした中には、アメリカ系アメリカ人やアフリカ系ディアスポラのアーティスト、そしてラテン系アーティストの作品を重点的に収集しているリック・ホイットニーとティナ・ペリー=ホイットニー、そして2019年のヴェネチア・ビエンナーレで話題を呼んだスン・ユアンとペン・ユーの作品を手に入れたヤン・ドゥなどがいる。
7.Pornhub(ポルノハブ)が裸婦像の一部を削除
2021年夏、アダルト動画サイトPornhubが「Classical Nudes(古典的ヌード)」と題して、美術史上のさまざまな裸婦像を紹介。世間からは好奇心と笑いで迎えられたが、美術館側は使用許可を取らずに所蔵作品の画像を掲載したとして法的措置を辞さない構えを見せた。批判の高まりを受け、Pornhubは「Classical Nudes」の一部を削除している。
元記事:After Museums Complain, Pornhub Removes Content from Classical Nude Series
6.専門家が選ぶレンブラントの最高傑作
《夜警》、《テュルプ博士の解剖学講義》、《放蕩息子の帰還》など、レンブラントには有名な作品がいくつもある。だが、ARTnewsが専門家にお気に入りのレンブラント作品を尋ねたところ、これらの作品を選んだ人はいなかった。
元記事:What Are Rembrandt’s Best Works? Eight Curators Discuss Their Favorite Pieces by the Old Master
5.記録的な高額落札の前にも高値で売れていたビープルのNFT作品
アート界におけるNFTブームの最初の兆候は、ビープル(Beeple、本名マイク・ウィンケルマン)が最も高額な存命アーティストの仲間入りをする前に現れていた。クリスティーズのオークションでビープルのNFT作品が6900万ドルで落札される数日前、2020年の米大統領選を題材にした別の作品が、予想価格をはるかに超える660万ドルという値をつけていたのだ。その後、こうした高額落札はさほどめずらしくなくなったが、当時は大きな衝撃を与えるものだった。
元記事:Beeple NFT Artwork Sells for $6.6 M. Ahead of Viral Christie’s Auction
4.独特な人物画で知られるカリダ・ローレスが自作について語る
カリダ・ローレスの作品が、批評家から絶賛されたタナハシ・コーツの著書『ウォーターダンサー』の表紙を飾ったのは2019年のこと。それがきっかけで、水の中の黒人の姿を描いた彼女の絵は大きな注目を集めるようになった。同書の出版後にはローレスの作品が公開される機会も増え、たとえば最近彼女の作品を扱うようになったギャラリー、Lehmann Maupin(リーマン・モーピン)やロサンゼルス・カウンティ美術館などで見ることができる。「自分が描こうとしているのは、目に止まらないくらいの、ほんの一瞬の人物の動き。それにはとても細かい観察が必要です」とローレスはARTnewsに語っている。
元記事:Calida Rawles’s Ethereal Paintings of Water Push the Boundaries of Portraiture
3. バーニー・サンダースのコラ画像がネットで拡散
2021年の初めにネットで爆発的に拡散し、アート界でも今年最も大きな話題の一つとなったのはバーニー・サンダース上院議員の画像だ。その画像とは、ジョー・バイデン大統領の就任式で、厚着をしてマスクをつけたバーニー・サンダース上院議員が折りたたみ椅子に座っている様子を撮影したもの。それに目をつけたツイッターユーザーたちは、サンダース氏の写真を美術史上のさまざまな画像に合成。たとえば、過激なパフォーマンスで知られるマリーナ・アブラモヴィッチの前で座っているものや、古典的な風景画の中にポツンと座っている画像などがある。
元記事:Bernie Sanders Stars in Art History’s Greatest Artworks in New Viral Meme
2.スタジオジブリが生み出した失敗作
スタジオジブリは「千と千尋の神隠し」や「もののけ姫」など、表現力豊かな宮崎駿のアニメーション映画で知られている。だが、息子の宮崎吾朗が後を継ぎ、ジブリアニメを残念な方向に導いている今、スタジオジブリはもうかつてのような存在ではなくなってしまったのだろうか? 「失望するのは、宮崎吾朗はスタジオジブリの偉大な遺産の継承者にふさわしくないということだ。自らの芸術的ビジョンがないまま、低予算のプロジェクトを引き受けている」とARTnewsのシャンティ・エスカランテ=デ・マテイは書いている。
元記事:How Anime Legend Hayao Miyazaki’s Son Squandered Studio Ghibli’s Legacy
1.2021年ワースト作品? イタリアの農婦像が炎上
イタリアのサプリで働く労働者を称えるために作られた彫刻は、今年最悪のアート作品だったのだろうか? その通り、と考えた政治家もいる。エマヌエーレ・スティファノ作の問題の彫像は、19世紀の詩に登場する農婦をイメージして作られた。スティファノは、この農婦をしなやかな身体の女性として表現したが、特に臀部を強調したことからツイッターで炎上することになった。イタリアの政治家ラウラ・ボルドリーニは、この作品を「女性や、この像が本来称えるべき歴史を侮辱した」と非難している。(翻訳:野澤朋代)
元記事:Italian Statue of Scantily Clad Worker Draws Controversy: An ‘Offense to Women’
※本記事は、米国版ARTnewsに2021年12月29日に掲載されました。元記事はこちら。