アジア最大規模のクィア・アート展がソウルで開催。ギルバート&ジョージほか約70組が参加

韓国初の大規模クィア・アート展「SPECTROSYNTHESIS SEOUL(スペクトロシンセシス・ソウル)」が、2026年3月20日よりソウルのアートソンジェセンターで開幕する。アニー・リーボヴィッツギルバート&ジョージら国際的巨匠とキム・アヨンなどの韓国人アーティスト、約70組による作品を通じて、韓国のLGBTQ+の歴史と現在を多角的に照らし出す。

Inhwan Oh, Where He Meets in Seoul, 2020, powdered incense, 436×618 cm. Installation view of The Moment of Gieok, Seoul Arts Center/Seoul Calligraphy Art Museum, Seoul, 2019–2020. Courtesy of the artist
参加アーティストのひとり、オー・インファン(Inhwan Oh)による《Where He Meets in Seoul》(2020)powdered incense, 436×618 cm. Installation view of The Moment of Gieok, Seoul Arts Center/Seoul Calligraphy Art Museum, Seoul, 2019–2020. Photo: Courtesy of the artist

ソウルのアートソンジェセンターにて、グループ展「SPECTROSYNTHESIS SEOUL(スペクトロシンセシス・ソウル)」が2026年3月20日から6月28日まで開催される。香港を拠点とするサンプライド財団と同センターが共催する本展は、LGBTQ+コミュニティおよびそれに関連するテーマを探求するアーティスト・グループ70組以上が参加する大規模なもの。韓国における主要芸術機関でのクィアをテーマとした初の本格的展覧会となり、韓国のLGBTQ+コミュニティの歴史と現在の生活実態を、国内外のアーティストの実践との対話を通じて照らし出す。

クィアの歴史をアーカイブする

本展は、サンプライド財団が主導するシリーズ展「SPECTROSYNTHESIS」の第4弾にあたる。「spectro-(スペクトル/光・多様な連続体)」と「synthesis(統合・合成)」を組み合わせた同シリーズは、アジア各地の社会的・政治的・文化的文脈に応じながら、LGBTQ+の芸術表現と可視性をテーマに展覧会を展開してきた。これまでに台北現代美術館(2017年)、バンコク・アート&カルチャー・センター(2019〜2020年)、香港のタイクン・コンテンポラリー(2022〜2023年)で開催されており、今回のソウル展が4都市目となる。

サンプライド財団の創設者兼エグゼクティブ・ディレクターのパトリック・サン(Patrick Sun)は、本展について「クィアネスを、生と社会の継続的な変容を理解するための形而上学的なレンズとして概念化するもの」と述べている。2014年に設立された同財団は、LGBTQ+コミュニティの豊かな創造的歴史を広く社会に伝えるとともに、次世代のアーティストが変革を起こすことを奨励・支援することを使命として掲げる。

サンプライド財団創設者兼エグゼクティブ・ディレクターのパトリック・サン。Photo: Courtesy Sunpride Foundation

キュレーションが問いかけるもの

本展のキュレーションを手がけるのは、アートソンジェセンターのアーティスティック・ディレクターであるキム・スンジョン(Sunjung Kim)と、香港中文大学文化研究学科の助教授でメディア史家・文化研究者のリー・ヨンウ(Yongwoo Lee)の二人だ。

2012年の光州ビエンナーレで共同芸術監督を、同年のドクメンタ13ではリサーチャー兼キュレーターを務めるなど、韓国現代アートの国際的な発信を長年にわたり担ってきたキム・スンジョンは、本展を「支配的な美術史の語りの中でしばしば見過ごされてきた多様なアイデンティティ・関心・芸術実践を問い直し、複数の交差する視点からクィア・アートにアプローチする展覧会」と説明する。彼女は本展において、「トランス(trans)」を中心的テーマとして掲げ、身体・民族・ジェンダー・生と死・現実と幻想といった境界を横断しながら、存在の変容的条件を問い直す。記憶の蓄積によって形成されるアイデンティティの語りを、様々なメディアと地域のアーティストたちの言葉によって展開させ、複数の感性が交差する重層的な視覚言語を形成する。

一方、リー・ヨンウは「記憶」「場所」「形式」という3つのテーマを軸に、韓国のクィア・アートの実践と前衛的な感性を考察する。韓国の急速な近代化の中で周縁化されたクィアの人々の経験をアーカイブし、益善洞(イクソンドン)、楽園洞(ナグォンドン)、梨泰院(イテウォン)といったソウルのクィア・サブカルチャー発祥の地としての歴史を、グローバルなクィア言説の中に位置づけ直す。

コミッションワークと国際的な顔ぶれ

シン・ワイキン(Sin Wai Kin)《Essence (Film Still)》(2024)HD video installation, color, sound. Image: Courtesy of the artist
デュー・キム(Dew Kim)によるソウルでの個展「Dear Fear at out_sight」(2020)より。Photo: Junyong Cho
チョン・ウンヨン(Jeong Eun-young)《Sick Seoul》(2026)4K video, sound. Image: Courtesy of the artist
カン・スンリー(Kang Seung Lee)《Untitled (King Club)》(2021)acrylic on linen, wood, 146×213.4 cm. Photo: Courtesy of the artist and Gallery Hyundai
ソン・セジン(Song Se-jin)《The Passing Present and the Preserving Past》(2024)single-channel video, 4K, 7 min. 47 sec. Image: Courtesy of the artist
ユン・ジョンウィ(Yoon Jeong-eui)《Upper Body (Jeongwoo)》(2023)fired clay, glaze, 32.5×63×44 cm. Image: Courtesy of the artist

本展では、アートソンジェセンターとサンプライド財団の共同委嘱により制作された、シレン・ウン・ヨン・ジョン(siren eun young jung)、マーク・ブラッドフォード(Mark Bradford)、マリア・タニグチ(Maria Taniguchi)、グリム・パーク(Grim Park)の新作が初披露される。さらに、アニー・リーボヴィッツ(Annie Leibovitz)ギルバート&ジョージ(Gilbert & George)マーティン・ウォン(Martin Wong)ロバート・ラウシェンバーグ(Robert Rauschenberg)といった国際的な巨匠たちの作品は、キム・アヨン(Ayoung Kim)、カン・スンリー(Kang Seung Lee)、オー・インファン(Inhwan Oh)ら注目の韓国人アーティストの作品と対話しながら展示される。また、サンプライド財団コレクションから30点以上の作品も出品される。

展覧会カタログには、アーティストのキム・スンファン(Sung Hwan Kim)が自身の視点から書き下ろした委嘱エッセイが収録される予定だ。

SPECTROSYNTHESIS SEOUL
会期:2026年3月20日(金)〜6月28日(日)
開館時間:12:00〜18:00 ※月曜休
会場:アートソンジェセンター


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