サザビーズ、23年は東京と上海にギャラリー開設などアジア拠点に重点。22年は過去最高の約1兆800億円の売上
大手オークションハウスのサザビーズは、2022年の総売上高が80億ドル(約1兆800億円)に上ると見込んでいる。これは創業以来の最高額で、アジアでの拠点拡大計画に弾みがつきそうだ。
22年の売上高見込みはコロナ禍前の19年の48億ドルを大幅に上回り、やはり過去最高を記録した21年の73億ドルからさらに10%弱の増加となった。この好調な数字からは、世界経済に数々の不安材料がある中でもアート市場が安定していることが読み取れる。
総売上高80億ドルのうち、64億ドル(約8700億円)は、ニューヨーク、香港、ロンドン、パリ、ジュネーブで開催されたファインアートおよびワインや宝飾品といったラグジュアリー品のオークションによるもので、前年の60億ドルから上昇している。
一方、プライベートセールでは11億ドル(約1500億円)の売上高を見込んでいる。しかし、プライベートセールは減少傾向が続いており、21年は13億ドル、コロナ禍で公開オークションが制限された20年の売上高は15億ドルだった。
サザビーズはまた、アジアでの成長が停滞気味であるとしながらも、引き続きアジアの拠点に重点を置くことを明らかにしている。
香港を拠点とするアジア地域の22年の売上高は、11億ドル(約1500億円)で前年比横ばい。アジア地域からの入札額の比率は近年とほぼ同じ、入札総額の30%だった。世界全体では新規入札者の68%をアジア地域からの入札者が占め、アジア地域で見ると3人に1人が新規の入札者だ。
こうした中、サザビーズは24年に香港のセントラル地区に新拠点を設立し、アジア地域でのさらなる足場固めを目指している。約2200平方メートルの新ギャラリースペースでは、オークションや展覧会を開催する。それに先立つ23年には、東京と上海にもギャラリーをオープンさせる計画だという。
部門別では、近・現代アートの売上高がオークションとプライベートセール合計で30億ドル(約4000億円)と最大。中でも、同社の約280年の歴史で最高の売上高達成を後押ししたのは、シングルオーナーコレクションの大型セールだ。化粧品大手レブロンの買収劇で知られるロナルド・ペレルマンや、不動産業界の大物ハリー・マックローが所有していた美術品などのオークションの売上は、8億ドル(約1000億円)に上る。
サザビーズCEOのチャールズ・スチュワートは、所有者のステータスシンボルになるような正統派作品を求める市場の動きが業績の堅調さにつながっているとし、この傾向は「質への逃避」(*1)であると声明で述べている。
*1. 経済不安などで市場が不安定な時期に、投資家が資金をより安全な投資対象に移すこと。
年間売上高を伸ばしたもう1つの要因として挙げられたのは、新進アーティスト市場の活発さが続いていることだ。市場で人気が高まっているアーティストによる過去20年間の作品に特化したイブニングセール「The Now(ザ・ナウ)」を21年11月に立ち上げて以来、3回のオークションで2億4440万ドルを売り上げるなど、旺盛な需要が示されている。
商業的アピール力がある女性アーティストも、サザビーズが新たに力を注いでいる分野だ。実際、100万ドルを超える価格で落札された女性作家の作品は、19年以降、全体で70%以上増加しているという。
ワイン、宝飾品、車、服飾などのラグジュアリー部門は、昨年の2倍にあたる20億ドル(約2700億円)以上を売り上げ、ここでも過去最高を記録している。(翻訳:平林まき)
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