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サンフランシスコ近代美術館がNFT作品を初収蔵。ヴィクトリア朝の数学者の伝記映画を作品化

サンフランシスコ近代美術館( SFMOMA )は、リン・ハーシュマン・リーソンNFT作品《Final Transformation #2》(2022)を収蔵。NFT作品が同館に収蔵されるのはこれが初となる。

映画『Conceiving Ada』のスチール写真。Photo: Courtesy Altman Seigal

同作品には2つのエディションが存在するが、そのうちの1つは、SFMOMAで毎年開催される教育やコミュニティプログラムのための資金調達オークション、Art Bash 2022に出品する目的で、アルトマン・シーゲル・ギャラリーとハーシュマン・リーソンが同館に寄贈。匿名の落札者が9000ドル(約115万円)で購入した。SFMOMAの担当者はメール取材に対し、もう1つのエディションも最近リーソンから美術館に寄贈されたと回答した。 

《Final Transformation #2》は、リーソンが1997年に制作した映画『Conceiving Ada(邦題:クローン・オブ・エイダ)』の一場面を切り取ったNFT作品だ。この映画は、ティルダ・スウィントン演じるヴィクトリア朝の数学者エイダ・ラブレスを描いたもので、タイトルは、劇中でスウィントンが最後に言った台詞に由来している。 

SFMOMAのメディアアート部門のキュレーター、ルドルフ・フリーリングは、「19世紀に最初のコンピュータプログラムを書いた数学者、エイダ・ラブレスの伝記映画である本作は30年近く前に製作されたものだが、NFTのアイデアと共鳴している」と話す。フリーリングは昨年のArt Bash 2022の開催に先立ち、次のようにも語っている。「どんな時代の人々も、その時代の技術を用いて自らを再現してきました。そして今を生きる私たちは、AIブロックチェーン、そしてDNAに基づく技術革新によって、記憶装置と通信を司る新しい言語が生まれる瞬間を目の当たりにしているのです」 

ハーシュマン・リーソンは1960年代から、人間と機械の関係をテーマに作品制作を行ってきたアーティスト。2021年以降のNFTブームを機に、ニューメディアアーティストにスポットライトが当てられ、リーソンにも再び注目が集まっている。SFMOMAはリーソンによる複数の写真作品のほか、合成DNAの小瓶を含むマルチメディア作品《Room #8》(2006-18)をすでに収蔵していた。 

今回、リーソン作品と同時に収蔵されたNFT作品は、ウェイン・ティーボー、スカイ・ホピンカ、シンディ・シャーマンの作品を含む62点。また、ヨランダ・アンドラデ、安楽寺えみ、ニュー・レッド・オーダーなど、これまで同館で所蔵が無い作家の作品も18点収蔵している。 

SFMOMAのディレクター、クリストファー・ベッドフォードはプレスリリースで、「私たちの近年の収蔵作品は実に多岐に渡り、そこには多様な芸術的ビジョンがあります。これは、地元のアーティスト、そして世界の作家の作品を幅広く収集するというSFMOMAのミッションにも適っています。当館のコレクションがより豊かな物語を編めるよう尽力する、学芸員チームのたゆみない献身に感謝します」と述べている。(翻訳:編集部) 

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