現代アートやファッション関連のお宝が約400点。VOGUEの伝説的エディターの遺品がオークションに
US版VOGUEの編集長アナ・ウィンターの右腕として、また、アフリカ系アメリカ人として初めて同誌のクリエイティブ・ディレクターを務めたアンドレ・レオン・タリー。昨年1月に死去した彼が遺した美術品やデザイン画などがクリスティーズのオークションに出品されることになった。
2022年1月に73歳で亡くなったアンドレ・レオン・タリー。ファッション界に風穴を開けた人物として知られる彼の遺品から、プラダ、グッチ、ルイ・ヴィトンといったラグジュアリーブランドのトランク、ローブ、サングラスなどが、遺言執行人によって来月売りに出される予定だ。
タリーは、ファッションやアート、メディア業界をはじめ幅広い人脈があり、今回オークションに出品される400点近い遺品がそれを物語っている。遺品の一部は、タリーが理事を務めたサバンナ芸術工科大学に寄贈される。
2月15日にクリスティーズ・ニューヨークで行われるオークションでは、総額100万ドル(約1億3000万円)の値が付くと予想されており、売却益は、歴史的に黒人信者の多い2つの教会の支援に充てられる。
出品される遺品にはアンディ・ウォーホルのシルクスクリーン版画3点も含まれ、予想落札価格はそれぞれ1万5000~2万ドル(約195万〜260万円)。そのうちの1点は、タリーの師である伝説のファッションエディター、そしてメトロポリタン美術館コスチューム・インスティテュートのディレクターも務めたダイアナ・ヴリーランドがモデルのものもある。
ヴリーランドは、他の出品作品にもたびたび登場する。たとえば、ファッション写真界の巨匠、ホルスト・P・ホルストが1979年に撮影した写真では、マンハッタンの自宅にある真っ赤な部屋のソファーにヴリーランドが横たわっている。ちなみにこの部屋は、「地獄の庭」と呼ばれていた。
まだ若いタリーが、アンディ・ウォーホルやビアンカ・ジャガーと一緒にディナーに出席している1981年の写真は、Interview誌のエディターで、ウォーホルのアトリエ兼サロン「ファクトリー」のメンバーでもあったボブ・コラセロが撮影したもの。また、Andy Warhol's Interview誌(のちのInterview誌)の創刊10周年記念品で、黒い筆記体の誌名があしらわれた黄色のキャスター付きマガジンケース2点も出品される予定だ。
このほかにも、イヴ・サンローランによるコラージュ作品や、ヴィヴィアン・ウエストウッドのローブ、カール・ラガーフェルドによるスケッチなど、ファッション界の歴史的人物によるアートワークやデザイン画も多数出品される。ラガーフェルドは、メトロポリタン美術館コスチューム・インスティテュートで行われる2023年メット・ガラのテーマにもなっている。(翻訳:石井佳子)
from ARTnews