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反戦訴える77歳の女性アーティストの作品をロシア警察が押収。「ここは私の国、私の祖国」

ロシアのサンクトペテルブルクで、反戦をテーマにした展覧会が警察の強制捜査を受け、展示されていた作品が押収されたとAFP通信が伝えている。

ロシアのサンクトペテルブルクで開催された2019年の母親集会で、抗議活動を行うエレーナ・オシポワ。Photo: Courtesy Alexei Kouprianov/Creative Commons

この展覧会で20点の作品を展示したのは、77歳のアーティスト、エレーナ・オシポワだ。ロシアでは昨年来、「ロシア軍の信用を傷つけること」や反戦デモが「違法」とされている。オシポワはこれにあたるとして、最高で15年の禁固刑を言い渡される可能性がある。

関係者によると、ロシアのリベラル政党「ヤブロコ」の支部で行われていた展覧会に、爆発予告があったとして警察が立ち入った。また、同党が出した声明によると、警察の報告書には、爆発物は見つからなかったが「ロシア軍に関する偽情報が含まれている可能性のあるカンバスや厚紙に描かれた絵」を発見したと書かれていたという。

オシポワは、プーチン大統領批判の反政府活動で知られる。きっかけは、第2次チェチェン紛争中の2002年、チェチェンの独立派武装勢力が起こしたモスクワのドゥブロフカ劇場占拠事件だった。

「その時、もうこれ以上黙っていられないと思いました」

オシポワは2022年にニュースメディアのMeduzaにこう語っている。「だから、私はポスター用の厚紙にこう書いたんです。大統領、直ちに軌道修正せよ!」

以来、オシポワは何度も抗議活動を理由に逮捕され、罰金刑を受けている。2022年には公共の場で反戦プラカードを掲げたとして、武装警官に拘束される動画がSNSで拡散された。

「サンクトペテルブルクの良心」と呼ばれるオシポワは、幼い頃、ナチスによる872日間のレニングラード軍事包囲網を生き抜いた(レニングラードはサンクトペテルブルクの旧名)。その後、美術を学び、やがてサンクトペテルブルクで美術を教えるようになった。

「今より悪かったことはありません」。オシポワは抗議活動を禁止する法律の施行以降、ロシア各地で抗議者の拘束が続いていることについて、こうAFP通信に語った。

「ここは私の国、私の祖国なのに、なぜ声を上げてはいけないのでしょうか?」

米外交問題評議会が発行する国際政治経済ジャーナル、Foreign Affairs誌によると、ロシアでは2022年に2万人以上が政治的理由で拘束された。「主に公の場で反戦感情を表明したため」とされる。刑事訴追を受けたのは378人、うち51人が刑に服している。

オシポワの展覧会は1月31日に始まり、ロシアのウクライナ軍事侵攻から1年目にあたる2月24日まで開催される予定だった。(翻訳:石井佳子)

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