バーキンのNFTをめぐる裁判でエルメスが勝訴。「MetaBirkins」は芸術表現ではないと判断
この裁判は、アーティストのマンソン・ロスチャイルドによるNFTプロジェクト「MetaBirkins」がブランドの商標権侵害にあたると主張するエルメスによって起こされたもの。ニューヨーク南部地区裁判所は、ロスチャイルドのNFTを「芸術」とみなすことは難しく、エルメスの主張を認める判決を下した。ロスチャイルドは今後、13万3000ドル(約1750万円)の損害賠償を請求されることになる。
「MetaBirkins」は、エルメスの有名なバッグであるバーキンをふわふわとしたファーで覆ったバッグのNFT。ロスチャイルドはこれを「オンライン・アートプロジェクト」であり、「デジタル版のバーキンが、実生活と同じような錯覚を起こせるかどうかの実験」であると説明していた。
ロスチャイルドは、バーキンのNFT1個につき125ドルの値をつけており、このプロジェクト全体で約12万5千ドル(約1650万円)を売り上げたと推測される。しかしエルメスは、それを大きく超える推定110万ドル(約1億4500万円)の利益をあげたと見ている。
2021年にこのプロジェクトが専用ウェブサイトで公開されて間もなく、エルメスはロスチャイルドに対して書面で中止勧告を行ったが、ロスチャイルドは「制作したことを謝罪するつもりはない」という姿勢を貫き、このNFTプロジェクトは「ファッションの動物虐待の歴史に対する批判」であると回答していた。しかし、プロジェクトは「芸術」であるというロスチャイルドの主張は受け入れられないとして、エルメスは2022年1月に彼を提訴した。
裁判を担当したジェド・S・ラコフ判事は、ロスチャイルドのNFTが芸術的表現にあたるかどうかを判断するテストを活用するよう陪審員に要求。テストの結果、陪審員たちはこのNFTは芸術とは言えず、また、一部のユーザーはMetaBirkinsがエルメスの製品だと勘違いしていた可能性があると結論づけた。
今月初め、芸術と商業を融合させた芸術家アンディ・ウォーホルの伝記を書いた美術評論家のブレイク・ゴプニックが鑑定人として法廷で証言する可能性が浮上したものの、裁判所はこれを認めず、多くはエルメスが勝訴するだろうと見ていた。
今回の結果を受けてロスチャイルドの弁護団の一人は、ニューヨーク・タイムズ紙に「ビッグブランドにとっては素晴らしい日。アーティストと憲法修正第1条にとっては最悪の日だ」とコメント。エルメス側は、本件に関して現時点で声明を出していない。
from ARTnews