オルセー美術館、10年の裁判を経てルノワールほか盗品由来の絵画4点を返還
2月16日、フランスの行政裁判所はパリのオルセー美術館に対し、同館が現在所有する、第2次世界大戦中に盗まれたルノワール、セザンヌ、ゴーギャンの作品4点を、20世紀フランスの著名な美術商アンブロワーズ・ヴォラール(1867-1939)の相続人に返還するよう命じた。
返還される作品は、ルノワール《Marine Guernesey》(1883)、《Judgement of Paris》(1908)の習作、ゴーギャン《Still life with mandolin》(1885)、セザンヌ《Undergrowth》(1890-92)。
1939年に73歳で急死したヴォラールは、6千点にもおよぶポスト印象派とモダンアートを所有していた。これら美術品の査定を任された専門家たちは、第2次世界大戦中にそのうち7点の絵画を盗んでドイツの美術館、画商、あるいはナチスの党員に売却してしまったという。
ヴォラールの相続人は2013年、専門家が盗んだとされる作品の返還を求めて訴訟を起こしていたが、10年の争いの末、フランス高等裁判所は4点の絵画が盗まれたことを認め、オルセー美術館側に返還するよう判決を下した。これを最初に報じたアート・ニュースペーパーによると、同館は控訴しない予定。
4点の絵画はすべて、第2次世界大戦後にドイツで回収された美術品を集めたデータベースで「返還されるべきもの」に分類されていた。
ヴォラールは、セザンヌの初個展、パリでのピカソ初個展、マティスの世界巡回展を実現させ、1890年代から1930年代のパリ美術界に大きな影響を与えた美術商。その膨大なコレクションは美術史上最も高価な作品を含んでおり、彼の死後、兄弟に遺贈されるにあたりその分割方法を巡って激しい争いが繰り広げられた。
弟の1人で遺言執行人に指定されていたルシアン・ヴォラールは、専門家であるエティエンヌ・ビグヌ、マルタン・ファビアニと結託して、遺産の一部を盗み出した。第2次世界大戦後、彼らの不正行為についてヴォラールの相続人は訴訟を起こしたが、フランス政府は彼らの取引の証拠が得られなかったため、返還には至らないと判断。一方、ヴォラールはユダヤ人ではなかったためナチスによる美術品差し押さえの対象ではなかったが、戦時中に失われた財産は元の持ち主に返還しなければならないとの見解を示している。
ヴォラールの没後、彼のコレクションは世界中の美術館や個人コレクションに分散されたため、それらの返還をめぐって相続人たちの法廷闘争の場は広がっている。2012年には、ベオグラードの国立博物館に収蔵されている429点の作品をめぐってセルビア政府を提訴し、現在も係争中だ。(翻訳:編集部)
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