アメリカの制裁対象にロシアのリュビモワ文化相。「ウクライナの文化遺産の破壊に間接的に関与」
ロシアのウクライナ軍事侵攻に対する一連の制裁に関し、米財務省は新たにロシアのオルガ・リュビモワ文化相を制裁対象に追加した。
制裁リストの最新版は、ロシアによるウクライナ軍事侵攻が開始されて1年目となる2月24日に発表された。米財務省の声明では、リュビモワ文化相が追加されたことの説明はなかったが、「ロシアの国力を低下させ、残忍な戦争の継続や、それを支える資源調達能力を低下させる」のが制裁の目的だとしている。
2022年12月に欧州連合(EU)がリュビモワ文化相を制裁の対象とした際の声明には、「(同相の)指揮下で、(ロシア文化)省は、いわゆる『ドネツク人民共和国』と『ルハンスク人民共和国』(*1)に対し、財源などの支援を拡大した」と記されている。さらに、同相が「ウクライナの文化遺産や工芸品の破壊に間接的に関与し、現在併合されている地域の文化遺産を保護する努力を怠った」と非難している。
*1 2022年2月21日、ロシアはウクライナの一部を「ドネツク人民共和国」「ルハンスク人民共和国」として一方的に独立を承認し、ロシア軍に軍事基地等の建設・使用の権利を与える協定を結んだ。
2020年にウラジーミル・メディンスキーの後任として文化相に就任したリュビモワは、プーチン大統領によるウクライナ侵攻への全面的な支持を表明している。中でも広く報道されたのは、ロシアが不法に併合したウクライナのルハンスク州とドネツク州について、ロシアの「文化生活」への「統合」を賛美したリュビモワの発言だ。
2月23日の「祖国防衛の日」を記念する公式演説でリュビモワは、「戦闘員と芸術家たちによって1つの文化が創造されている」とし、「兵士や将校など軍隊関係者とその家族に芸術を提供し、彼らの憩いの時間を美と喜びで満たしている」と強調した。
ウクライナでは、現在までに少なくとも230の文化施設がロシア軍の攻撃で全半壊し、1万5000点以上の貴重な美術品や工芸品が盗まれた。国際監視団は、ロシア軍がウクライナの博物館・美術館で組織的略奪を行っていると非難している。
実際、ヘルソン地方美術館でほぼ全ての所蔵品がロシア軍によって略奪されたほか、ロシアの軍事侵攻で最初に占領された都市の1つであるメリトポリでは、スキタイの黄金美術の一大コレクションが地元の博物館から盗まれている。略奪美術品の多く(まだ闇市場に流れていないもの)は、2014年にロシアが不法に併合した黒海のクリミア半島で保管されていると報じられている。(翻訳:清水玲奈)
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