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  • 2023.03.03

サザビーズの新進アーティスト部門は完売の快挙! 一方、総売り上げは昨年より減少

3月1日、サザビーズの近・現代美術オークションがロンドンで行われた。気鋭アーティストに特化した「Now」部門は、完売を意味する「ホワイトグローブ・オークション」となった。しかし総売り上げは1億7260万ポンド(約280億円)で、昨年の28%減だった。

3月1日にロンドンのサザビーズで開催されたイブニングセール「Now」の様子。Photo: Haydon Perrior

最高額はカンディンスキーの61億円。目立つ第2次大戦時のユダヤ人迫害由来の出品

計2回のオークションでは、全57ロットのうち53ロットが落札され、92%の販売率を達成した。これは、2022年の同セールの89%を上回る数字で、2月28日にロンドンのクリスティーズで行われたオークションでの総売り上げ2億200万ドル(約270億円)をわずかに上回っている。

印象派・モダンアートのイブニングセールでは、キャロライン・ウォーカールシアン・フロイドの作品を含む10点の作品が落札され、ジェニー・サヴィルヴァシリー・カンディンスキー など、9人のアーティストが最高額を更新した。しかし、最終的な落札額としては、74点の出品があった昨年の同セールの2億2140万ポンド(約405億円)と比較すると28%減となった。

最高値がついた作品は、カンディンスキーの《教会のあるムルナウの眺め II》 (1910)で、3720万ポンド(約61億円)。オランダの美術館とユダヤ系ドイツ人コレクターの2人の相続人との間で10年にわたる所有権争いの末に競売にかけられた作品だ。

ヴァシリー・カンディンスキー《教会のあるムルナウの眺め II》 (1910) Photo: Courtesy Sotheby’s

そのほか、ルシアン・フロイドが1997年に娘イゾベル・ボイトを描いた《Ib Reading》が、オークションに初出品されたが、予想落札額を下回る1700万ポンド(約28億円)で落札された。しかし、これは裏で取引が行われている典型的な結果だ。

エドヴァルド・ムンクの大作《Dance on the Beach》(1906)は、第2次世界大戦中に迫害を受けたユダヤ人美術史家の相続人と、作品を所有していたノルウェーのコレクターとの間で法的和解が成立し、オークションに出品された。この作品の予想落札額は1200万ポンド(約19億円)。取り消し不能の入札者がおり、第三者による金額保証も付けられていたが、予想落札額をわずかに上回る1450万ポンド(約23億円)で落札された。

絶好調の新進アーティスト部門「Now」。アジアからの入札が活発

モハンマド・サーミ《Family Issues I》(2019)Photo: Courtesy Sotheby’s

2022年から始まった新進気鋭のアーティストの作品に特化したイブニングセール「Now」では、通常はサザビーズのオークショニアであるマイケル・マコーレーが取り仕切っているが、今回はヨーロッパの印象派とモダンアート部門の共同責任者であるヘレナ・ニューマンにハンマーを預けた。

「Now」では入札が活発に行われ、全20ロットが落札。完売を意味する「ホワイトグローブ・オークション」となった。総売り上げは予想の930万ポンド(約15億円)を上回る1090万ポンド(約17億円)。マイケル・アーミテージミリアム・カーン、ラガヴ・ババールなど7人のアーティストが最高額を達成した。

カーンの2018年の絵画《Das Genaue Hinschauen (The Close Look)》は、予想落札額の約15倍となる58万4200ポンド(約300万円)で落札された。一方、ババールは60万9600ポンド(約1億円)で、予想落札額の20倍以上となった。

現在、カムデン・アーツ・センターで展覧会中のモハンマド・サーミの絵画が、会場で注目を浴びていた。バグダッド生まれのアーティストが描いた《Family Issues I》(2019)は、割れたマグカップや鉢植えが室内に転がる、まるで家庭内で喧嘩があったような風景が描かれている。そのような不穏な題材にもかかわらず、入札は盛んに行われ、35万5600ポンド(5900万円)で落札された。

上海のK11 Art Foundationで展覧会を開催中の画家、キャロライン・ウォーカーも人気を集めていた。プールサイドをモチーフにした《In Every Dream Home》(2013)は、「Now」セールの作品としては唯一、取り消し不能の入札者がおり、高値での売却が確実視されていた。最終的に、この絵は予想落札額の6倍以上となる62万2300ポンド(約1億円)で落札された。

経済情勢が不安定な中でも活発に入札したのはアジア勢。彼らに特に人気だったのはゲルハルト・リヒターと、今回がオークションデビューとなったエマ・ウェブスターで、ウェブスターの作品《Primavera》(2019)は、アジアのコレクターに予想落札額の6倍以上の40万6400ポンド(約6600万円)で購入された。(翻訳:編集部)

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