ブルータスが発行したカエサル暗殺記念金貨、ギリシャへ返還。世界最高落札額で不正販売
2021年にオークションで、420万ドル(当時のレートで約4億5000万円)の世界最高落札額を樹立した金貨が、3月21日にギリシャに返還された。この金貨については、米移民・関税執行局の調査で、偽の証明書を使用して販売されていたことが判明している。
イードゥース・マルティアエ(*1)と呼ばれるこの金貨は、紀元前44年3月15日にカエサルが暗殺された歴史的事件を記念してブルータスが発行したものだ。マンハッタン地区検察局による引き渡し式で、やはりギリシャから略奪された他の28点の古美術品とともに返還が行われた。
*1 ラテン語で3月15日(ローマ暦の中央の日)を意味する。
イードゥース・マルティアエ・コインには金貨と銀貨がある。銀貨は通貨として、金貨は地位の高い人物への記念品として鋳造されたもので、現存が確認されている金貨はわずか3枚。捜査当局は、このコインがギリシャから密輸・販売された詳しい経緯を明らかにしていない。
移民・関税執行局のニューヨーク地区特別捜査官アイヴァン・J・アルヴェロは、声明で次のように述べている。
「古美術品の密売は、略奪者や密輸業者が文化遺産を犠牲にして利益を得る数十億ドル規模のビジネスだ。西洋文明の発祥の地であるギリシャは、特にこの種の犯罪の標的になりやすい。これらの貴重な文化財は、古代の生活の一部として大切に扱われていたもので、古いものは紀元前5000年頃までさかのぼる。今日、我われの協力者とともに、この貴重な文化遺産をギリシャの人々に返還できることを光栄に思う」
金貨以外に返還されたものには、埋葬用の石室の中にあった骨壷や、「Neolithic Family Group(新石器時代の家族集団)」と呼ばれる紀元前5000年から3500年に大理石から彫られた人間と動物の像5体が含まれている。後者は、今月初めに差し押さえられるまで、ニューヨークのメトロポリタン美術館に貸し出されて展示されていた。(翻訳:石井佳子)
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