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博物館職員が文化財を窃盗。監視カメラが捉えた「伝統装束の試着姿」

アメリカ・モンタナ州のブラックフィート・インディアン居留地にあるプレーンズ・インディアン博物館の職員が司法取引に応じ、同館から先住民の装束や装飾品などの文化財を盗んで隠匿した罪を認めた。

グリズリーベアの爪と真鍮のビーズをあしらった男性用の毛皮の首飾り。Photo: DeAgostini/Getty Images

地元メディアのモンタナ・ライト・ナウの報道によると、プレストン・ジェイ・スポテッド・イーグル容疑者は、5年の執行猶予付きで250時間の社会奉仕活動と罰金約1万7000ドル(約224万円)の判決を受けた。

裁判資料では、博物館の補助職員だった同容疑者が2021年5月から8月までの4カ月にわたって窃盗を繰り返し、グリズリーベアの爪があしらわれた首飾り、ビーズのモカシンシューズ、羽根冠に付いていたイヌワシの羽毛26枚を盗んだとされる。

ジェシー・ラスロビッチ連邦地方検事はプレスリリースで、「スポテッド・イーグル容疑者の最も悪質な行為は、神聖な物とされた呪術の道具を漁り、物理的な損傷を与えただけでなく、それを冒涜したことだ」と述べている。

熊の爪の飾りがある首飾りの窃盗が疑われた際、博物館ではほかに盗まれたものがないか調査を行い、一連の盗みが発覚したという。裁判資料によると、同容疑者が「歴史的価値のある装束」を取っ替え引っ替え着てみたり、自分の足に合うサイズのモカシンを探したり、スマートフォンで所蔵品を写したりしている様子が監視カメラに映っていた。

スポテッド・イーグル容疑者は、2022年10月に政府所有物の窃盗を認めたが(プレーンズ・インディアン博物館の所蔵品は連邦政府の管理下にある)、モンタナ・ライト・ナウによると、盗まれた文化財はどれも未回収のままだという。

アメリカの文化施設における最近の軽犯罪事例としては、フィラデルフィア州のフランクリン博物館で行われたクリスマスパーティで、酔っ払いの男が展示されていた中国・秦時代の兵馬俑の親指を盗んだ事件がある。この男も30年の実刑判決を免れる司法取引に応じて有罪を認めたため、4月17日に出される判決では2年の刑期と2万ドル(約264万円)の罰金刑を受けると見られている。(翻訳:石井佳子)

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