日本だけじゃない、世界中で美術品破損のニュースが相次ぐ
新潟県の越後妻有里山現代美術館MonET(モネ)に展示していた「大地の芸術祭」の作品2点(クワクボリョウタ《LOST#6》とカールステン・ニコライ《Wellenwanne LFO》)が4月21日、修学旅行中の中学生により破壊されていた事件が報じられた。世界に目を向けると、同じく美術品の破損のニュースが相次いでいる。故意は言語道断だが、過失は誰にでも起こり得る。曇天続きでぼんやりしがちなこの時期、特に注意されたし。
鑑賞中の「自撮り」にご注意
先週、マドリードのソフィア王妃芸術センターで、イタリア人観光客が作品と自撮りしようとしてつまずき、作品を破損させる事故があった。
スペインのABC紙によると、問題となっているのは、画家アルベルト・サンチェスがバレエ作品「La romería de los cornudos」(注:「寝取られ男の巡礼」の意)のために1933年に制作した舞台セット。観光客が転倒した際に作品の壁紙の一部を掴んで破いてしまったという。
同作品はもともと、詩人のフェデリコ・ガルシア・ロルカと劇作家のシプリアーノ・リバス・チェリフが書いたバレエ作品のセットとして作られた。物語の主人公は、夫と宗教的な巡礼の旅に出ている人妻を誘惑して妊娠させようとする男である。
最近、ソフィア王妃芸術センターでは常設展示の入れ替えが行われ、アルベルト・サンチェスの作品は現在、同館の目玉作品であるパブロ・ピカソの絵画《ゲルニカ》(1937)の近くの展示室に置かれている。
ただ、地元紙によれば、被害は深刻なものではなかったという。「これは事故であり、幸いなことに影響はほとんどない」と広報担当者は述べた。
「自撮り」が芸術作品の破損を引き起こしたのは、今回が初めてではない。2017年には、ワシントンD.C.の「ハーシュホーン美術館と彫刻庭園」で開催された草間彌生展の来場者が自撮り中にカボチャの彫刻を壊した(美術館は「軽度の損傷」と発表)。また2020年、イタリアのポッサーニョにあるアントニオ・カノーヴァ美術館では、来館者が19世紀の彫刻の石膏模型を破損。作品の足先を2本折る事故が起きた。
※この記事は、米国版ARTnewsに2022年6月6日に掲載されました。元記事はこちら。
ダラス美術館に男が侵入 ギリシャの工芸品を含む美術品を破壊
6月1日の夜、男が米国ダラス美術館に侵入し、ギリシャの美術品3点とネイティブアメリカンの現代作品を含む複数の美術品に大きな損傷を与えた。
ダラス・モーニングニュース紙によると、ブライアン・ヘルナンデス(21歳)は金属製の椅子で美術館のガラス張りの入り口を粉々に破壊。中に侵入すると、作品へと狙いを定めた。破壊行為の犠牲となったのは、紀元前6世紀のギリシャのアンフォラ(液体を保存するための陶製の容器)と、紀元前450年のギリシャで制作された箱だ。
警察によると、ヘルナンデス氏は、ライオンと戦うヘラクレスの絵が描かれた古代ギリシャの深鉢も破壊したという。1万ドル相当だというワニが描かれたカド族の陶器は、展示ケースから取り出され、博物館の床で粉々にされた。また、12の小型の展示物も軽い損傷を受けた。
事件を受けて、ダラス美術館は声明を発表。「この事件には大きな衝撃を受けているが、人に被害がなかったことは不幸中の幸いだ。職員と来館者の安全、そして美術品の管理と保護は、当館の最優先事項である」と述べた。
容疑者は、ダラス美術館の警備員に拘束される前に、美術館内で自ら警察に電話をかけたと報じられている。彼は警察に自白し、現在、器物損壊罪の容疑でダラス郡拘置所に拘留中だ。彼は、コレクションのほか、展示ケースや調度品など、美術館の所有物に数万ドルの損害を与えたとして告発されている。
警備員の供述によると、「交際相手と恋愛関係がもつれたことに腹を立て、美術館に押し入って展示物を壊した」と容疑者が話していたという。(翻訳:編集部)
※この記事は、米国版ARTnewsに2022年6月3日に掲載されました。元記事はこちら。