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  • 2022.08.02

アップルストアに19世紀の怪物が登場。ARが再現したウィリアム・ブレイクの世界

英国ロマン主義の先駆者と言われるウィリアム・ブレイク(1757-1827)。その絵画や詩に基づく幻想的なAR(拡張現実)作品が、ロンドンに新しくオープンしたアップルストアで7月28日に公開されたとArt Newspaperが報じた。

ウィリアム・ブレイク《ノミの幽霊》(1819–20頃) Tate Modern

このインスタレーションの作者は、オーストラリア出身のアーティストデュオ、ティン・グエンとエドワード・カッティング。もともとロサンゼルスのJ・ポール・ゲティ美術館のプロジェクト、「United Visions(ユナイテッド・ビジョンズ)」のために作られたもので、ARアプリで体験できる(アプリの名称も「United Vision」)。

「United Visions」では、ウィリアム・ブレイクの作品が現代風にアレンジされている。中心となる絵画、《ノミの幽霊》(1819–20頃)に描かれているのは、短い首といびつな頭を持ち、現実離れした強靭な巨人のような怪物だ。

ロンドンのブロンプトンロードにオープンしたアップルストアでのUnited Visions体験の様子 Photo Credit: Louis Jebb

ウィリアム・ブレイクは、このほかにも神秘的な絵画や版画、詩などを残している。難解とも言える特異な作風のため、生前は美術界からも文学界からも顧みられなかったが、のちにその哲学性や創造性が高く評価されるようになった。《ノミの幽霊》を所蔵するロンドンのテート・ブリテンでは、2019年9月から翌年2月まで、大規模な回顧展が開催されている。

ブレイクの長年の友人だったジョン・バーリーによれば、ブレイクは霊的な幻覚で見たノミの亡霊にインスピレーションを受けてこの絵を描いたという。テート・ブリテンでの展示に添えられた解説には、「この霊は、昆虫のノミとは似ても似つかぬ姿でブレイクの想像の世界に現れた」というバーリーの言葉が引用されている。

アップルストアで体験できるARには、《ノミの幽霊》の3Dアニメーションが、別のブレイク作品に描かれたいくつかの生き物とともに登場する。怪物たちは、その大きさを変えたり、動き回ったり、頭がトラになったりワシになったりする。トラの頭は、ブレイクの詩「The Tyger(トラ)」(1794)から、ワシの頭は洗礼者ヨハネを描いた絵からの引用だ。

音楽制作は、ヒップホップの代表的プロデューサー、ジャスト・ブレイズが担当。「The Tyger」など、ブレイクの詩をもとにサウンド化を行った。また、音楽に合わせて、ジャスト・ブレイズの息子でラッパー・詩人のオヴィアス・マクシムスによる朗読が流れる。(翻訳:清水玲奈)

※本記事は、米国版ARTnewsに2022年7月27日に掲載されました。元記事はこちら

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