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BTSのRMがSNSでシェアしたものとは。念願のバーゼル参加、自宅に飾るロニ・ホーン作品など

世界的人気を誇るK-POPグループBTSのリーダー、RMは、熱心なアートコレクターとして、そしてインフルエンサーとして存在感を発揮している。7月下旬にはユーチューブやインスタグラムで、アートをめぐるヨーロッパ旅行の様子を公開。最近もフリーズソウルへの参加、日本で村上隆と対面するなどアートの話題をシェアし続けている。

ラッパー、ソングライターでBTSのリーダーでもあるRM(本名:キム・ナムジュン) Courtesy of Bighit Music

RMのコレクションの中でも目を引くのは、米国の現代アーティスト、ロニ・ホーンの120万ドルの立体作品だ。《Untitled (But the boomerang that returns is not the same one I threw)(無題〈帰ってきたブーメランは、投げられたブーメランと同じものではない〉)》(2013-17)という半透明のガラスの円柱で、このシリーズの他の作品同様、文学作品から引用したフレーズがタイトルになっている。

RMがコレクションした作品のタイトルは、村上春樹の小説『スプートニクの恋人』の一節だ。RMは村上ファンで知られ、曲作りのインスピレーションの源になっていると明かしたこともある。インスタグラムで自宅に飾られているところを公開したこの作品を、RMは2021年12月にグザヴィエ・ユフケンスで購入したようだ。このギャラリーは、長年ホーンの作品を扱っている。

RMの投稿には、自宅にあるほかの作品も登場する。韓国人アーティスト、ユン・ヒョンクンの作品2点。米国のミニマリスト、ジョエル・シャピロの彫刻。RMの写真集にも出てくる韓国人アーティストのリー・ベーの作品などだ。ユン・ヒョンクンはRMの長年のお気に入りの作家で、彼は最近の旅行中にもその作品について投稿。また、BTSの所属事務所、HYBE(ハイブ)に飾ってあるリー作品の写真もアップしている。

さらに、スイスのバーゼルとフランスのパリでアートスポットを巡った最近の旅の様子も動画を交えて公開。この旅で彼が訪れたのは、世界最大級のアートフェア、アート・バーゼル。そして、パリの歴史的建造物を改築し、フランソワ・ピノーの現代アートコレクションを展示する美術館として2021年にオープンしたブルス・ドゥ・コメルスなどだ。同美術館でロニ・ホーンとコンセプチュアル・アーティストのフェリックス・ゴンザレス=トレスの2人展を鑑賞したRMは、彼らの作品を「僕の一番のお気に入り」だと言っている。

動画の中でRMは、初めて訪れるアート・バーゼルを「世界最高のアートフェア」と表現。「韓国のアートフェアには何度か行ったことがあるけれど、海外に出た時にはアート・バーゼルにもぜひ行ってみたいと思っていた」と彼は語る。「一番行きたかったのが、スイスのバーゼルで開催されるアート・バーゼルだったので、時間を作ってここまで来たんだ」

アート・バーゼルでRMは、ユ・ヨングク、イ・スンジョ、ス・ドホ、ナム・ジュン・パイクなど、韓国の現代アーティストの作品をたくさん見て回っていた。パイクもRMのお気に入りの作家で、その作品とナム・ジュン・パイク・アート・センターをインスタグラムで紹介したことがある。また彼は、最近ソウルのクジェ・ギャラリーで開催されたユ・ヨングクの展覧会を訪れている。

アート・バーゼルではさらに、スイス人アーティスト、ウーゴ・ロンディノーネの「Nuns and Monks(修道女たちと修道士たち)」シリーズの彫刻を探し出し、その前で「やっと見つけた」と話していた。RMは今年の春、ラスベガスでロンディノーネの《Seven Magic Mountains(セブン・マジック・マウンテンズ)》を、その後韓国で別のロンディノーネ作品を見に行っていた。また、この作家の小品をコレクションしている。

フィリップ・ガストンの絵画《At the Table(テーブルにて)》(1969)の前では、ギャラリーのスタッフと思われる人物に何かを質問。彼は、何年か前に韓国でガストンについての本(ロバート・ストー著)を読んでいる写真をシェアしていたほか、長く延期された後にボストン美術館で開催され、物議を醸した展覧会「Philip Guston Now(フィリップ・ガストン・ナウ)」にも行っている。

アート・バーゼルの動画には、4000万ドルで売れたルイーズ・ブルジョワの《Spider(スパイダー)》(1996)や、アート・バーゼルの会場の近くで同時開催されていた「デザイン・マイアミ(Design Miami)」に展示中のイサム・ノグチの光の彫刻《Akari(あかり)》も出てくる。

70点の大型作品が展示された「アート・バーゼル・アンリミテッド(Art Basel Unlimited)」というセクションからは、ザオ・ウーキーやアレックス・カッツの作品、そして、ファウンドフォト(*1)で構成されたエルンスト・カラメルの《Forty Found Fakes(40点のファウンド・フェイク)》の中からナム・ジュン・パイクとドナルド・ジャッドの作品にそっくりな画像を紹介している。


*1 新聞・雑誌の写真、蚤の市で売られている古い写真など、自分が撮影したのではない写真。それを取り込んで作品とする。

どうやらRMはジャッドのファンであるらしく、2021年にはテキサス州のチナティ財団(The Chinati Foundation)でジャッドとユン・ヒョンクンの展覧会を見ている。アート・バーゼルでは、フランシス・アリスの「Border Barriers Typology(国境 障壁 類型)」シリーズから、北朝鮮と韓国の間の非武装地帯を描いた《Case #4 (North Korea-South Korea)(事例4〈北朝鮮−韓国〉)》も紹介していた。

バーゼルでは、フェア以外にもバイエラー財団、ヴィトラ・デザイン・ミュージアム、バーゼル美術館、ティンゲリー美術館を、パリではポンピドゥー・センターやオルセー美術館を訪れた様子を見ることができる。

バイエラー財団では、モンドリアンの生誕150年を記念した展覧会を鑑賞。大聖堂を描いた2枚の絵を対比させながら、このオランダ人画家が抽象表現に到達する過程を紹介している。その後に出てくるポンピドゥー・センターでの映像では、1942年のモンドリアン作品《New York City(ニューヨーク・シティ)》について、「そこまで完璧じゃない。やっぱりモンドリアンも人間なんだね」とコメントしていた。

旅の動画の中でRMは、アメリカの彫刻家アレクサンダー・カルダーの作品をいくつも取り上げている。アート・バーゼルに出品されているモビール、バーゼル美術館の展示作品、そしてバイエラー財団の庭にあるスタビル(*2)《The Tree(ツリー)》などだ。動画の字幕でカルダーを「モビールの創始者」と説明しているRMは、2021年にメトロポリタン美術館で行ったスピーチでもカルダーを称賛していた。


*2 動かない抽象彫刻。カルダーの動く彫刻モビールに対し、同じように金属の平たい曲線を用いるが、動かないものをスタビルと言う。

バイエラー財団とポンピドゥー・センターでは、スイスの彫刻家アルベルト・ジャコメッティの作品を紹介。バーゼル美術館では、ピカソとエル・グレコの2人展や、フランク・ステラの大きな絵と日本のコンセプチュアル・アーティスト河原温の作品4点を紹介した。彼は以前にも、ニューヨークのディア・ビーコンで日付を用いた河原の「Today Series(トゥデイ・シリーズ)」の写真を撮り、インスタグラムに投稿したことがある。

オルセー美術館では、写実主義の画家ギュスターヴ・クールベ、印象派のカミーユ・ピサロの作品(《シャポンヴァルの風景》など)、アントワーヌ・ブールデルの彫刻、エドゥアール・マネの《草上の昼食》、フィンセント・ファン・ゴッホの肖像画と《ローヌ川の星月夜》、クロード・モネの《積みわら》などを紹介していた。(翻訳:野澤朋代)

※本記事は、米国版ARTnewsに2022年9月8日に掲載されました。元記事はこちら

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