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  • 2023.02.14

エスティローダーの創業一族がクリムト作品をユダヤ人の元所有者子孫に返還

ニューヨーク・マンハッタンにある美術館ノイエ・ギャラリーの創設者であり、化粧品会社、エスティローダーの創業一族であるロナルド・ローダーが、50年間所有してきたグスタフ・クリムト作品の返還に合意した。

グスタフ・クリムト《黒い羽根の帽子》(1910) Courtesy Ronald S. Lauder Collection

ローダークリムト《黒い羽根の帽子》(1910)を、ユダヤ人の元所有者であるアイリーン・ベランの子孫に返した後、再取得して法的所有権を得ることに同意している。和解の詳細やベランの相続人に支払われる金額は明らかにされていない。

今回の解決に至る背景には、2018年から始まった絵画の所有者記録の調査がある。世界ユダヤ人会議の代表も務めるローダーは、これまでも返還活動を支援してきた。今回の声明では、作品の所有者を追跡する調査活動を「苦労して」行ったが、それでも「ギャップが残っている」と述べている。

《黒い羽根の帽子》は、1973年にローダーが初めて入手したクリムト作品だが、その後、2001年に設立したアッパーイーストサイドのノイエ・ギャラリーに収蔵された(同館のコレクションは、ローダーの個人コレクションとは別)。この作品は、2020年に同館で開催したオーストリア美術の展覧会で展示されていた。

作品を所有していたアイリーン・ベランは、1934年まで現在のチェコ共和国ブルノに住んでいたが、やがてナチスの迫害を避けるためにヨーロッパを脱出。1947年にニューヨークに移住した。調査では、1928年までさかのぼってベランがこの作品を所有していたことが分かっている。

1934年から1957年の間、この絵は行方不明だったが、オーストリアのアートディーラーで元ナチス党員のフリードリヒ・ウェルツがドイツのシュトゥットガルトで開催した展覧会で、再び確認された。(翻訳:編集部)

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