サザビーズのイブニングセールで日本の個人コレクターがクリムトを73億円で落札。マグリット《光の帝国》は作家史上2番目に高額の57億円
5月16日、サザビーズ・ニューヨークは、元ワーナー・ブラザーズ・レコードCEOで昨年逝去したモー・オースティンのコレクションと20世紀巨匠の作品の2件のオークションを開催。手数料込みで合計4億2700万ドル(約591億円)の売上を記録した。
マグリットの名作《光の帝国》が、作家史上2番目に高額の57億円
オースティンコレクションは、ジャン=ミシェル・バスキアやジョアン・ミッチェルといった一流作家の作品を含む15点が出品され、14点が落札。総落札額は予想の1億300万ドル(142億円)を上回る1億2300万ドル(170億円)だった。グスタフ・クリムトやピカソなど、20世紀の巨匠の作品が40点出品された第2部では、5件の出品取り消しがあったものの、手数料を含めて3億3000万ドル(456億円)の売り上げとなった。
今回のイブニングセールの総ハンマープライスは3億6200万ドル(約500億円)で、予想価格3億7540万ドル~5億3400万ドル(519億円~738億円)を下回っている。
オースティンコレクションでは、ルネ・マグリットの昼と夜が同時に描かれているような名作《光の帝国》(1951)が初公開され、予想落札額3500万ドル(48億円)を大きく上回る4230万ドル(約57億円)で落札。マグリット作品で史上2番目の価格となった。マグリット作品はほかにも《アルンハイムの領地》(1949)が出品され、1890万ドル(約26億円)で落札された。
また、バスキアの《Moon View》(1984)も、予想落札額の700万ドル~800万ドル(約9億円~約10億円)を上回る900万ドル(約11億円)で落札された。
ロンドンやニューヨークを拠点とする市場専門家が予測した通り、競合するクリスティーズやフィリップスと同様、出品点数は2022年の5月開催分より減らされており、今回のセールの雰囲気は、より慎重なものになっていた。
日本の個人コレクターが、クリムト絵画を72億円で落札
第2部では、グスタフ・クリムトの《Insel im Attersee》(1901-02)が大きな注目を集めた。予想落札額は4500万ドル(約62億円)前後となっており、7分間に及ぶ入札合戦の末、日本の個人コレクターが5320万ドル(約73億円)で落札した。
20世紀デンマークの画家ヴィルヘルム・ハマスホイの静物画《Interior. Music Room, Strandgade 30》(1907)は、電話と現場の参加者2人によるじりじりとした競りが繰り広げられた。最終的に、予想落札額の3倍にあたる900万ドル(約12億円)で現場の入札者が落札。ハマスホイの史上最高額となった。サザビーズの声明によると、この作品は米国の美術館に購入されたとのことで、その場所は明らかにされていない。
意外にも不人気だった作品は、エドワード・ホッパーの赤い納屋の不穏な静物画、《Cobb's Barns, South Truro》(1930-33)だ。ホイットニー美術館が将来の作品購入資金調達のために出品した作品群の一つで、その美術的な価値がオークション前から騒がれていた。最終的には、予想落札額800万ドル(11億円)を下回る600万ドル(約8億円)で落札されている。
オークションは、絵画が最も高い評価を受ける傾向にあるが、それ以外のジャンルの作品も今回は健闘した。イサム・ノグチの彫刻作品《The Family》は、ニューヨークとロンドンの専門家による6分間の入札合戦の末、ハンマープライスが1040万ドル(約14億円)に達し、会場が拍手に包まれた。これは、イサム・ノグチの史上最高額になる。落札者は、コネチカット州のゴルフ場所有者だという。(翻訳:編集部)
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