コロナ禍で文化財の盗掘が急増。インターポールによる調査報告
インターポール(国際刑事警察機構)の最新調査で、文化財を対象とした不法行為が新型コロナウイルスの世界的感染拡大のなかで急増したことが明らかになった。
インターポールの報告書「Assessing Crimes Against Cultural Property(文化遺産関連犯罪調査)」によると、2020年には世界中で文化財の不法発掘が、コロナ禍が起きる前に比べ増加している。アフリカでは、盗掘犯罪件数が2019年の44件から2020年には153件に上昇。増加が最も著しかったのはアジア・南太平洋地域で、42件から1563件という大幅増だった。
同報告書では、世界中で盗まれた文化財は3万5000点を超えるとされ、その大半はコインなど「貨幣」に分類されるものだった。インターポールによると、考古学遺跡は博物館などと比べて公的な保護が手薄になりがちだ。また、紛争地域にある考古学遺跡は、とりわけ盗掘の被害に遭いやすいことも指摘されている。
インターポールの美術品盗難部門の調整役であるコラード・カテシは、「コロナ禍で文化財の違法取引を行う犯罪者は大きな影響を受けたが、文化財に対する需要や犯罪発生件数は減少していない。各国で渡航制限が強化されるなか、犯罪者は新たな方法で文化財の窃盗、盗掘、密輸を行わざるをえなくなった」と述べている。
一方、博物館・美術館の所蔵品が犯罪の被害を受ける割合は従来よりも低下し、北米と南米を除く全ての地域で2020年は2019年より犯罪件数が減少した。
調査報告は、博物館・美術館で感染拡大防止のための規制が行われたことが盗難の機会の減少につながった可能性があることを示している。しかし、インターポールは、依然として文化財を狙う犯罪組織には懸念があるとしている。
犯罪組織は窃盗の機会を常に狙っていて、特定の品を狙うコレクターの委託を受けて盗みを働くこともある。2021年5月には、EUの刑事警察機構であるユーロポールと世界税関機構(WCO)が共同で、美術品・アンティーク品の密売ネットワークを摘発するためのアテナII作戦とパンドラIV作戦を実施した。アフガニスタン、スペイン、イタリアなど世界103カ国を対象にした作戦の結果、これまでに1万9000点が回収されている。(翻訳:清水玲奈)
※本記事は、米国版ARTnewsに2021年10月20日に掲載されました。元記事はこちら。