拡大し続けるサグラダ・ファミリアの増築計画に、地元住民が猛反対。1万5000人が立ち退き対象
1882年から1世紀以上、工事が続けられていることで有名なサグラダ・ファミリア。スペインを代表する建築であるこの聖堂で、隣接地を巻き込む新たな増築計画が発表され、バルセロナに古くから住む地元住民の反対運動が2019年に起こった。
スペインのエル・パイス紙によると、サグラダ・ファミリアの建設委員会は、2019年にかねてから購入を検討していた約560平方メートルの土地の一部を取得し、長さ57メートル、幅4.9メートルの階段設置工事を開始した。
同年9月、この拡張工事の影響を受ける住民と企業250社ほどが、サグラダ・ファミリアに与えられた工事認可に関し、カタルーニャ高等裁判所に異議を申し立てた。原告側は、増築計画で3000人が立ち退きの対象になるうえ、この増築はガウディによる設計の「原案」には含まれていないと訴えた。
これに対し、建設委員会のエステべ・カンプス代表は、増築する階段は1916年にガウディの作成した設計図によって認可されたと反論。裁判所はこの主張を認めた。
2022年7月のユーロニュースの報道では、拡張計画が進んで立ち退き対象は最大で1万5000人に増加。立ち退き対象住民の90パーセントが加盟する組織「サグラダ・ファミリア建設に影響を受ける人々」は、現在も行政と話し合いを続けている。
サグラダ・ファミリア脇のマジョルカ通りを巻き込む増築計画をめぐる論争は、この聖堂建築で初めて起きた問題ではない。ガウディの工房はスペイン内戦で破壊され、1926年のガウディの死後、歴代の建築家は推測に基づいて建設作業を続けてきた。
1953年には、ミース・ファン・デル・ローエ、ル・コルビュジエ、ヴァルター・グロピウスといった当時の著名建築家たちがマニフェストを発表。サグラダ・ファミリアの建設関係者に対し、これ以上の増築を止めるよう求めた。しかし増築は続き、近年は観光客増加による入場料収入の伸びや近代工法の採用で工事は加速している。
サグラダ・ファミリアは着工以来、建設資金を信者の寄進や一般の寄付金に頼っている。2019年の時点で約4100万ドル(約57億円)の負債を抱えているが、2026年以降の落成を目指して工事が進んでいる。(翻訳:清水玲奈)
*2019年11月15日の記事に加筆
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