2024年ヴェネチア・ビエンナーレ日本館代表作家に毛利悠子が選出。「アートの近傍で起こる世界的問題を明らかにしたい」
2024年4月20日から11月24日にかけて開催される、第60回ヴェネチア・ビエンナーレの国別パビリオン日本館の出品作家に美術家の毛利悠子、キュレーターにイ・スッキョンが選ばれた。
毛利悠子は果物やビニールなど身近なものを素材にし、コンポジション(構築)へのアプローチではなく、環境などの諸条件によって変化してゆく「事象」にフォーカスするインスタレーションや彫刻を制作している。
国内での展示に加え、「第23回シドニー・ビエンナーレ」(2022年)、「アジア・アート・ビエンナーレ2021」(台中、2021年)、「第34回サンパウロ・ビエンナーレ」(2021年)、「グラスゴー・インターナショナル2021」(2021年)など、国際的に活動しており、最近では、5月に開催された「第14回光州ビエンナーレ」でのインスタレーションが話題になった。
毛利は今回の選出にあたってのコメントで、近年頻発した環境活動家のアートアタックについて触れつつ、地球上で起こっている気象危機に言及。「危機は逆説的に、人々に最大の創造性を与える」と、東京駅構内で起こる水漏れに日用品を用いた「(不)器用仕事(ブリコラージュ)」で立ち向かう駅員たちに注目したフィールドワーク《モレモレ東京》着想の根源を明かした。
そして、「2019 年に『50 年に1度の』洪水に見舞われたヴェネチアにて、アートの近傍で起こる世界的問題を剔抉(てっけつ:暴く、明らかにするなどの意味)し、創造的なヴィジョンを提示したいと思う」と抱負を語った。
5月の光州ビエンナーレで、毛利と共にアーティスティックディレクターとして展示を手掛けたのが、テート・モダンのインターナショナル・アート部門シニアキュレーターを務めるイ・スッキョン。今回毛利の指名で、ヴェネチア・ビエンナーレでもタッグを組むことが決まった。
イ・スッキョンはこれまでに、「Nam June Paik(ナム・ジュン・パイクの回顧展)」(2019-20年)、「A Year in Art: Australia 1992(オーストラリアのアートの 1 年、1992 年)」(2022-23 年)、「Richard Bell(リチャード・ベル)」(2023 年)など数多くの展覧会を手掛けている。
イは、選ばれた感想について、次のように語る。
「以前から、毛利さんの活動を高く評価してきました。彼女の日常にありふれた素材の選び方や空間の構成はとても興味深いです。そして音や音楽は、主役にならず、過剰に際立つこともなく、与えられた空間と一体化するか、或いは空間の一部になるように感じます」
「彼女の作品を鑑賞していると、対象だけでなくそれを取り巻く環境に目が向き、意図する音だけでなく雰囲気に耳を澄まし、無音も意識するようになるんです。2024 年のヴェネチア・ビエンナーレ日本館にて、示唆に富む作品を生み出してくれると確信しています」
毛利の展示は各国パビリオンが建ち並ぶ主要会場の1つ、ジャルディーニ地区の日本館(主催:国際交流基金)で行われる。