ARTnewsJAPAN

今週末に見たいアートイベントTOP5: 26ギャラリーが集結! Tokyo Gendaiのコラボ企画「TENNOZ ART WEEK」、コロナ禍にパリで撮影した新シリーズを発表「fumiko imano展」

関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

ソール・ライター 『ハーパーズ・バザー』1963年2月号 のための撮影カット © Saul Leiter Foundation

1. 片山博文「羊をつくる」(TARO NASU)

sheep 0111, 2023 ©︎Hirofumi Katayama Courtesy of TARO NASU

AIによる写真は現実の偽物か? 片山博文10年ぶりの個展

映画『ブレードランナー』の原作として知られる、フィリップ・K・ディックのSF小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』。この小説を想起させる「羊」の写真作品をメインビジュアルにした今展は、AIによる画像生成技術を使った片山博文の新作展だ。実に10年ぶりとなる個展で、注目が集まる。

展示されるのは、片山自身が撮影した大量の写真をGAN(敵対的生成ネットワーク)というAIに学習させて生成したイメージ群。片山は「人工知能を用いた画像生成は、単純な機械的な操作でもなく、かつ人為的な行為でもないところが面白い」と話す。小説では人間よりも人間らしい人造人間が描かれ、読者に「本物とは?」と問いかけるが、片山は「写真は現実の偽物か」「写真の偽物は現実の偽物でもあるのか」との疑問を鑑賞者に投げかけてみせる。

片山博文「羊をつくる」
会期:6月30日(金)~ 7月29日(土)
会場:TARO NASU(東京都港区六本木6-6-9ピラミデビル4F)
時間:11:00 ~ 19:00 


2. 坂本夏子「Tiles | Signals ─ unexpected dimensions」(Kanda & Oliveira)

展示風景

2つのモチーフを掛け合わせ、新たな作品世界へ

愛知県立芸術大学大学院在学中から「VOCA展2010」奨励賞を受賞するなど、早くから才能を開花させた1983年生まれの坂本夏子。しかし「絵を描くことは、今も不自然で不自由な行為のまま」だと胸の内を吐露する。「生きることは自由をもとめて描くことで、描くためのあたらしい方法がいつも必要」だとも話し、これまで一貫して絵画制作の方法論を模索してきた。今回、初期からの「タイル」と2019年以降の「シグナル」という、作家にとって重要な2つのモチーフを掛け合わせた新たな作品世界を繰り広げる。

油彩の大型作品から小品、ドローイング、立体など計100点ほどの新作で構成される今展。タイルとシグナルの関係をさまざまに変化させ展開しながら自身の絵画の抽象化を推し進め、実験性の高い作品に挑戦した。既存の表現に追従せず、「まだ無い世界」を見つけようとする坂本の画業の過程を目に焼き付けたい。

坂本夏子「Tiles | Signals ─ unexpected dimensions」
会期:7月1日(土)~ 8月5日(土)
会場:Kanda & Oliveira(千葉県船橋市西船 1-1-16-2)
時間:13:00 ~ 19:00


3. TENNOZ ART WEEK(寺田倉庫ほか天王洲周辺各所)

「figurante」イメージ

Tokyo Gendaiとコラボ。CADAN26ギャラリー集結の展示は必見

国内外から主要な74ギャラリーが集結する、初開催のアートフェアTokyo Gendai(東京現代)」とのコラボレーション企画として、東京・天王洲エリアで開かれる「TENNOZ ART WEEK」。ビジュアルデザインスタジオ・WOWによるインスタレーション作品の展示や光の演出、WHAT MUSEUMで開催中の高橋龍太郎コレクション「ART de チャチャチャ -日本現代アートのDNAを探る-」展ほかの夜間開館、多数のギャラリーによる展覧会などが楽しめる。

目玉となるのは、国際的ピアニスト・アーティストの向井山朋子による新作インスタレーション・パフォーマンスの発表(会場:寺田倉庫G3-6F)。端役やエキストラを意味する「figurante」と題した本作は、観客を舞台や表現者と溶け合うような曖昧な世界へ誘う。「CADAN : 現代美術 2023」(会場:WHAT CAFE、T-LOTUS M)には、日本現代美術商協会に参加するギャラリーのうち26軒が集合。アーティストにフォーカスした個展形式で作品を紹介する。期間中はTokyo Gendaiの会場とTENNOZ ART WEEKエリアをシャトルバスがつなぐ。

TENNOZ ART WEEK
会期:7月7日(金)~ 10日(月)
会場:寺田倉庫G3-6F(東京都品川区東品川2-6-10寺田倉庫G号)ほか天王洲周辺各所
時間:会場により異なる


4. fumiko imano「LE FUMISTOL」(KOSAKU KANECHIKA)

Seriously/Paris/2021, 2023 © fumiko imano, Courtesy of KOSAKU KANECHIKA

コロナ禍のパリのホテルを舞台にした双子のコラージュ写真

2018年からLOEWEのイメージブックに参加し、VANSのシューズのデザインを手がけるなど、ファッション分野で個性を際立たせてきたfumiko imano。35mmカメラで撮影したセルフポートレイトを切り貼りし、自身を双子のように演出した写真を代表作とする。作品には無邪気さやノスタルジックな雰囲気を漂わせるが、写真の継ぎ目の境界が虚構であることを印象付けもする。

写真とドローイングの新作35点前後を発表する「LE FUMISTOL」は、2021年のコロナ禍にパリの高級ホテル「Le Bristol」で制作したシリーズだ。当時高額だったPCR検査を受けて渡航し、閑散としたホテルで隔離期間を過ごしたimano。ルームサービスの“パーフェクトな朝食”も3日目には食べ飽き、「高級な非日常体験というのも日常になってしまえば価値が自分の中で薄くなる」と実感した。時が経ち、あの朝食に思いを馳せて再訪を計画したが、空っぽだったホテルは今やセレブたちにより満室に。作品には、あのコロナ禍だけ存在した「自分だけのホテル」が写る。

fumiko imano「LE FUMISTOL」
会期:7月7日(金)~ 8月12日(土)
会場:KOSAKU KANECHIKA(東京都品川区東品川1-33-10 TERRADA Art Complex 5F)
時間:11:00 ~ 18:00


5.  ソール・ライターの原点 ニューヨークの色(渋谷ヒカリエ)

ソール・ライター 『ハーパーズ・バザー』1963年2月号 のための撮影カット © Saul Leiter Foundation

ソール・ライターの未公開作など400点以上、大規模スライド投影も

類まれなる色彩感覚から「カラー写真のパイオニア」と呼ばれるニューヨークの写真家、ソール・ライター。没後に未整理だった作品のデータベース化が進められ、いまも新たな発見が続いている。生誕100年を迎えた今年、カラー写真の大がかりなスライド投影、初公開のモノクロ写真、絵画など400点以上の作品を通じて創作の原点に迫る。

まずは、画家を志していたソール・ライターが写真に取り組み始めた1950~60年代ごろのモノクロ写真に注目。物語性をもった詩情あふれる日常風景のほか、当時交流したアンディ・ウォーホルやユージン・スミスなど後の巨匠たちのポートレートも紹介される。女性誌「ハーパーズ バザー」でのファッション写真の仕事も特集。商業写真に留まらない、美意識を発揮した作品群は見ごたえ十分だ。展示で必見なのは、10面の大スクリーンを使った迫力のスライド投影。2020年以降に発見されたカラースライドなど約250点で、ソール・ライターの色彩の世界が体感できる。

ソール・ライターの原点 ニューヨークの色
会期:7月8日(土)~ 8月23日(水)
会場:渋谷ヒカリエ9F ヒカリエホール ホールA(東京都渋谷区渋谷2-21-1)
時間:11:00 ~ 20:00 (入場は30分前まで)

あわせて読みたい