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  • 2023.08.10

今週末に見たいアートイベントTOP5: ライアン・ガンダーの新作3点が日本初公開、大岩オスカールら8人が読み解く、土地の記憶と風景

関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートなお盆休みを満喫しよう!

メラニー・ボナーヨ|melanie bonajo《When the body says Yes》Photo by Peter Tijhuis, Courtesy of the artist and AKINCI

1. ライアン・ガンダー アイムジャストレスティングマイアイズ(ちょっと⽬を休ませてるだけなんだ)(福岡醤油ギャラリー)

ライアン・ガンダー《ブルジョワジーをあっと言わせる(作家の蔵書の中の全ての窓から見た南の景色)》2023 © Ryan Gander; Courtesy the artist, TARO NASU. Photograph by Ryan Gander Studio

世界的アーティスト、ライアン・ガンダーの新作3点が日本初公開

皮肉とユーモアの効いた作品で知られるイギリスの現代美術家、ライアン・ガンダー。本展は、ガンダーが持っている書籍から、窓をとらえた漫画や写真を集めたライトボックス作品《ブルジョワジーをあっと言わせる(作家の蔵書の中の全ての窓から見た南の景色)》、25年先の⽇付と時刻が印字されたチケットが券売機から出てくる《あなたをどこか別の場所に連れて行ってくれる機械》など、新作3点を⽇本初公開する。

ガンダーおなじみの、壁⾯に埋め込まれた⽬⽟が観客の動きに反応してコミカルに動く《最⾼傑作》や、壁の⽳からネズミが⽪⾁たっぷりにおしゃべりする《2000年来のコラボレーション(予⾔者)》も展示。「アートとは、ルールに縛られない場所。不思議なもの、奇妙なもの、説明のつかないものが受け⼊れられ、探し求められる、社会で唯⼀の場所である」と自身が語るように、ちょっと不思議なガンダーの作品世界を心のおもむくままに楽しんでもらいたい。

ライアン・ガンダー アイムジャストレスティングマイアイズ(ちょっと⽬を休ませてるだけなんだ)
会期:7月15日(土)~ 11月26日(日)
会場:福岡醤油ギャラリー(岡⼭市北区⼸之町 17-35)
時間:11:00 ~ 17:00  (入場は30分前まで)


2. 市原湖畔美術館開館10周年記念展「湖の秘密 ―川は湖になった」(市原湖畔美術館)

大岩オスカール《Yoro River 1》《Yoro River 2》(2023) 撮影:田村融市朗 提供:市原湖畔美術館

8人のアーティストが解き明かす、土地の記憶と風景

市原湖畔美術館のすぐ近くにある養老川と高滝湖。それらをめぐる地域の歴史、地勢、民俗を掘り下げ、土地をひとつの発想の源とし、さまざまなアーティストたちが、絵画、写真、 映像、彫刻、インスタレーション、パフォーマンスなどで美術館内外に作品を展開する展覧会。出展作家は、岩崎貴宏、大岩オスカール、尾崎悟、加藤清市、菊地良太、南条嘉毅、松隈健太朗、椋本真理子の8人。

高滝湖は、1990年、高滝ダムの建設によって誕生した人工湖だが、建設と引き換えに110戸の村が湖の底に沈んだ。その過程をつぶさに写した加藤清市は、ダムによる新しい生活への希望と古を失う人々の思いを収めた、30余点による《水没した村の記憶》を展示する。「川」をテーマとした作品を多く手がける大岩オスカールは、養老渓谷から、小湊鉄道がのどかに走る住宅地、そしてコンビナートが林立する工場地帯へと流れる養老川のダイナミックに変化する風景を虚実入り混ぜながら、全幅12メートル、高さ3メートルの巨大な壁画に描き出す。

市原湖畔美術館開館10周年記念展「湖の秘密 ―川は湖になった」
会期:7月15日(土)〜 9月24日(日)
会場:市原湖畔美術館(千葉県市原市不入75-1)
時間:10:00 〜 17:00(土曜・祝前日は9:30 〜 19:00、日曜・祝日は9:30 〜 18:00、入場は閉館の30分前まで)


3. 「403architecture [dajiba] /  椅子の場所は決めることができる」(アーツ前橋)

前橋中央通り商店街での制作風景 撮影:木暮伸也

いまの前橋の風景を「市民から借りた椅子」で表現

彌田徹、辻琢磨、橋本健史により2011年に設立された建築コレクティブ「403architecture [dajiba]」。彼らはこれまで、静岡県浜松市の拠点から徒歩圏内の比較的小規模な改修プロジェクトを手掛けてきた。

本展で彼らは、フィールドを群馬県前橋市に移し、街歩きを開始。そして、「前橋固有の風景は人々の主体性によって形作られている」という考えに至った。この主体性を表現する方法として思いついたのが、この地域で活動する人々から椅子を借りることだ。椅子は座ることで身体が特定の場所に固定される。市内から集まった様々な椅子は「一人一人の『ここでやっていこう』という多様な決意を映し出している」という。現在、前橋市の風景はどのような主体性の集合によって形作られているのか、本展で確かめてもらいたい。

403architecture  [dajiba]  /  椅子の場所は決めることができる
会期:7月29日(土)〜 9月24日(日)
会場:アーツ前橋(群馬県前橋市千代田町5-1-16)
時間:10:00 〜 18:00(入場は30分前まで)


4. 鮫島ゆい 「The Beats of Ghosts」(NADiff a/p/a/r/t)

《ボールゲーム》2023 530×920 mm Oil and Acrylic on canvas, Panel

断片的なモチーフの外側にある「不可視の存在」を表現

「目に見えないもの」に興味を抱き、「みえるものとみえざるものをつなぐこと」をテーマに作品を制作する 鮫島ゆい。鮫島の作品は、断片的に描かれた古代の祭りや神事の道具などのモチーフを不定形なカンバス上で組み合わせている。この手法は、「呼び継ぎ」という陶器や漆器の修復方法から着想を得ており、継ぎ足された部分や欠損部が見えない存在を暗示している。

本展では、幽霊の存在への関心を出発点に、断片的なモチーフの外側にある見えないものと幽霊の存在を結びつけ、不可視の存在を表現した新作を発表する。鮫島は、会場で「不可視の『幽霊の鼓動』を観察してほしい」と話す。

鮫島ゆい 「The Beats of Ghosts」
会期:8月3日(木)〜 8月27日(日)
会場:NADiff a/p/a/r/t(東京都渋谷区恵比寿1-18-4 NADiff A/P/A/R/T 1F)
時間:12:00 〜 20:00


5. あなたのアートを誰に見せますか?(東京藝術大学大学美術館)

メラニー・ボナーヨ|melanie bonajo《When the body says Yes》Photo by Peter Tijhuis, Courtesy of the artist and AKINCI

アーティスト8組の作品から、現代に起こる様々な問題を考える

社会の様々な問題に向き合うアーティストの作品を通して、孤独、身体とセクシャリティ、人間と自然の関係、他者との協働や連帯など、現代の問題について考える。本展では、アーティストと鑑賞者をつなぐ試みとして、「誰に作品を見てもらいたいか、制作の時に考えたことは何か」などのアーティストへの問いと答えを会場に掲示し、鑑賞者には「どの作品が好きか、そのアーティストに伝えたいことは何か」などの問いに対して意見を書くシートを用意し、それを壁に貼り出して、後から来た人が見ることができる仕組みを作る。

出品作家は、青山悟、アンドレア・バウアーズ&スザンヌ・レイシー、メラニー・ボナーヨ、小林正人、リー・ムユン、岡田夏旺、パク・サンヒョン、海野林太郎。活動家の記録を撮り続け、ジェンダーや環境、移民の正義のために戦う人々の経験を作品化するアンドレア・バウアーズと、人種差別や貧困などの社会問題にコミュニティと協働して取り組むスザンヌ・レイシーは、共同制作した作品を出品。東京藝術大学美術研究科修士課程で学びつつ、ホテルの客室清掃員のアルバイトに従事する岡田夏旺は、年代や出身国が異なる清掃員仲間との交流から得た経験や、清潔さと汚れの境界に関する考察を、映像インスタレーションで表現する。8月20日(日)の14:00~15:30、青山悟と小林正人によるトーク「そこに愛はあるのか?」も開催。

あなたのアートを誰に見せますか?
会期:8月8日(火)〜 8月27日(日)
会場:東京藝術大学大学美術館(東京都台東区上野公園12-8)
時間:10:00 〜 17:00

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