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  • 2023.11.24

今週末に見たいアートイベントTOP5: アートブックの奥深い魅力を発信する「TOKYO ART BOOK FAIR」、アニッシュ・カプーアの絵画を通じた「現代の監視社会」への問い

関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

Anish Kapoor Untitled 2022 Oil on paper 66 x 101 cm ©Anish Kapoor. All rights reserved JASPAR, 2023

1. ゴッホと静物画―伝統から革新へ(SOMPO美術館)

フィンセント・ファン・ゴッホ 《アイリス》 1890年 油彩/キャンヴァス ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム(フィンセント・ファン・ゴッホ財団) Van Gogh Museum, Amsterdam(Vincent van Gogh Foundation)

ゴッホを始め、ドラクロワ、モネ、ルノワール、ゴーギャンらの作品が集結

国内外24カ所から名だたる画家たちの69作品を一堂に集め、ゴッホを軸に17世紀から20世紀初頭の「静物画」の流れを考える展覧会。ゴッホは先人たちからの学びをどう自作へと昇華し、次世代の画家たちに影響を与えたのか──。アジアで唯一ゴッホの《ひまわり》を所蔵するSOMPO美術館にゴッホの油彩画25点が集結し、そこにクラウス、ドラクロワマネモネピサロルノワールゴーギャンセザンヌ、ヴラマンク、シャガールらの作品が加わるという、豪華で見ごたえのある内容だ。

展示は3章で構成される。「伝統」では、17世紀に静物画のジャンルが確立して以降、豊かな富の象徴や、死のメタファーとして描かれた伝統的なモチーフなどに注目。続く「花の静物画」では、人気の画題だった花に焦点を当てる。3章目の「革新」は、ゴッホを始め写実の概念を打ち破って静物画に主観を反映させた、19世紀から20世紀の画家による独自の表現を紹介する。今展では、《ひまわり》と構図が共通し、背景の黄色と花の紫色の対比が印象的な《アイリス》も注目作。各画家が描いたひまわりの絵の特集も。日時指定予約制。

ゴッホと静物画―伝統から革新へ
会期:10月17日(火)~ 2024年1月21日(日)
会場:SOMPO美術館(東京都新宿区西新宿1-26-1)
時間:10:00 ~ 18:00 (12月8日は20時まで、入場は30分前まで)


2. 堀江栞「かさぶたは、時おり剥がれる」(√K Contemporary)

展示風景

画家の傷を癒した水彩画と、再び向き合った岩絵具の新作

和紙に岩絵具で、抒情的な質感の作品を描いてきた堀江栞。2021年にはタカシマヤ美術賞やVOCA展佳作賞を受賞し、翌年には、神奈川県立近代美術館鎌倉別館で「生誕110年 松本竣介/小企画:堀江 栞—触れえないものたちへ」を開催するなど、注目を集める気鋭の画家だ。会場には、今回初めて発表した水彩ドローイングの連作《かさぶた》110点がずらりと並び、VOCA展の受賞作《後ろ手の未来#2〜#6》と同シリーズの新作も披露される。

「絵を描くというのは、岩絵具に触れること」と話す堀江が、筆を握れなくなったのは一年半ほど前。その傷を癒して前に進むために選んだのが、水彩絵具だった。小さな白い画面に水彩で描き続けた人の顔のようなものは「かさぶた」なのだという。柔らかく鮮やかな色彩たちに、葛藤を受容していく癒しの過程があらわれる。VOCA展受賞作の《後ろ手の未来#2〜#6》はこの水彩のドローイングとは対照的に、岩絵具で画面いっぱいに描かれた人物像が重厚な存在感を漂わせる。約1年半のブランクを経て取り組んだという新作《後ろ手の未来#7》も見逃せない。

堀江栞「かさぶたは、時おり剥がれる」
会期:11月18日(土)~ 12月23日(土)
会場:√K Contemporary(東京都新宿区南町6)
時間:11:00 ~ 19:00 


3. Art Exhibition vol.1「Kunst Party」(OAG Art Center Kobe)

稲垣智子《Mirrors》(2022)参考画像

神戸の新スペースで、ドイツゆかりの作家らがオープニング展

新たな芸術文化の発信地として、「OAG Art Center Kobe(オーアーゲーアートセンターコウベ)」がオープン。ドイツ語圏の国々に日本を紹介する公益社団法人オーアーゲー・ドイツ東洋文化研究協会が所有する施設で、アーティスト、デザイナー、研究者らが主体となって運営していく。こけらおとしとなるのは、個展や留学などでドイツにゆかりのある作家を中心にした12人のグループ展だ。

参加作家は、稲垣智子、岩名泰岳、植松琢麿、内海昭子、大﨑のぶゆき、大野由美子、国谷隆志、田中秀和、谷山恭子、長嶺慶治郎、林勇気、渡辺えつこ。「場所性」を展示の切り口として、絵画、彫刻、映像、写真、インスタレーションなどを展示する。展覧会名の「Kunst」はドイツ語で「アート」の意。社交の集まりや、登山や部隊の仲間といった複数の意味を持つ「Party」を組み合わせて、多様な人々の関わりによるアート活動を目指す同センターの方針を反映させたという。

Art Exhibition vol.1「Kunst Party」
会期: 11月19日(日)、20日(月)、25日(土)~ 27日(月)
会場:OAG Art Center Kobe(兵庫県神戸市東灘区本山北町6-17-32)
時間:12:00 ~ 17:00


4. TOKYO ART BOOK FAIR 2023(東京都現代美術館)

世界から約300組が参加するアートブックの祭典。企画展やイベントも多数

国内外からアートブックやアーティストブック、ZINEなどを制作する出版社やギャラリー、アーティストらが集まるブックフェア。13回目の今年は約300組が参加し、企画展やライブパフォーマンス、目利きたちによるブックストアなどを通じ、アートブックの独創的で奥深い魅力を伝える。

企画展では、自身が営むコンビニエンスストアの装飾のために作品を制作してアーティストになった、トーマス・コンを回顧。菓子や煙草の空き箱、雑誌の切り抜きなどを使った小さなコラージュ作品群や、一点もののアートブックを展示する。また、ヨーゼフ・ボイス、アーノルフ・ライナー、フルクサスを柱に作品を収集した私設美術館「清里現代美術館」(2014年閉館)が所蔵した美術書籍や資料のアーカイブプロジェクトも紹介。

ひとつの国や地域の出版文化をピックアップする「ゲストカントリー」では今年、北欧の5カ国に注目。芸術活動として出版物を扱うアーティストのためのプラットフォームを担う、ノルウェーの非営利出版社「Multiples, Inc.」などが参加する。また、ムーミンを生んだフィンランドのトーベ・ヤンソンをフィーチャー。トーベを「本を作るアーティスト」として紹介し、トーベがパートナーと夏を過ごした島などの自然を撮影したホンマタカシの写真も展示する。

11月26日(日)14:30から、東京都現代美術館の講堂で、他館で開催中の個展「即興 ホンマタカシ」(東京都写真美術館、1月21日まで)の関連トークを開催。写真集の制作や流通でホンマと縁が深い、中島佑介と濱中敦史をゲストに迎える(席に限りがあるため予約推奨)。

TOKYO ART BOOK FAIR 2023
会期:11月23日(木・祝)~ 26日(日)
会場:東京都現代美術館(東京都江東区三好4-1-1)
時間:11:00 ~ 19:00(23日 12:00~20:00)


5. アニッシュ・カプーア「奪われた自由への眼差し_ 監視社会の未来」(GYRE GALLERY)

Anish Kapoor Untitled 2022 Oil on paper 66 x 101 cm ©Anish Kapoor. All rights reserved JASPAR, 2023

鑑賞者を自らの不条理と対峙させる、カプーアの絵画

インド出身の世界的彫刻家、アニッシュ・カプーア。東洋的な思想に基づくカプーアの作品は、欧米的な価値観の域を超えた独自性を持ち、人間存在そのものを映し出す。今回カプーアが題材に選んだのは、ITが発展した現代の監視社会。「目に見えない監視体制で、監視される側が芸術表現をどのように捉えていくのか」をテーマに、絵画作品でその答えに歩み寄る。

ソーシャルメディアでの送受信やウェブでの購入履歴など、私たちも「監視」に使われるデータを無意識のうちに提供している現代。そして監視が日常的になることで、統制社会に順応する人間こそが“標準”とされていく──。作品を見ることで、鑑賞者は気づいていなかった自らの不条理と対峙することに。カプーアが作品を通じて我々に投げかける「奪われた自由への眼差し」は、果たしてどんなものなのだろうか。

アニッシュ・カプーア「奪われた自由への眼差し_ 監視社会の未来」
会期:11月23日(木・祝)~ 2024年1月28日(日)
会場:GYRE GALLERY(東京都渋谷区神宮前5-10-1 GYRE 3F)
時間:11:00 ~ 20:00  (1月2日は13:00から)

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