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大英博物館のずさんな管理に不信感。ナイジェリア政府が美術品の返還を再要請

大英博物館の職員により、所蔵品が盗難、紛失、破損した事件を受けて、ナイジェリア政府は、同館所蔵のアフリカの美術品を本国に返還するよう改めて要請した。

大英博物館に所蔵されているベニン・ブロンズ。Photo: Leon Neal/Getty Images

返還を要請しているのは、かつてナイジェリア南部にあったベニン王国から植民地時代に略奪された「ベニン・ブロンズ」と呼ばれる真鍮と青銅の工芸品だ。

8月16日、大英博物館は、所蔵する紀元前15世紀から19世紀にかけての金や半貴石、ガラスなどの宝飾品が職員によって窃盗、破損されていたことを発表した。職員は解雇され、同館のプレスリリースにその名前はなかったが、イギリスの2つのメディアは、ギリシア古美術のベテラン学芸員、ピーター・ヒッグスであることをつきとめている

今回の事件で盗まれた所蔵品は1500点以上にのぼり、ある品物はeコマースサイトのeBayに最低価格40ポンド(約7500円)で販売されていた。2021年に、盗難に関する告発が幹部職員にEメールで送られていたことも明らかになった

事件を受けて、ナイジェリアの国立博物館・記念物委員会のアッバ・イサ・ティジャニ所長は、イギリスのメディア、スカイ・ニュースに、「ナイジェリアでベニン・ブロンズを保管することは安全ではないと言ってきた博物館で、盗難が起こっていると聞いてショックを受けています」と語った。

大英博物館に所蔵されるベニン・ブロンズは900点を超え、中には16世紀の貴重なものもある。コレクションは「精巧な装飾が施された鋳造のプレート、動物や人物の像、王室や個人の装飾品」が特に多く、展示室には常時100点以上が並んでいる。

ティジャニは、それらのベニン・ブロンズはベナン王国から不法に持ち出されたものだと強調した。「これらは盗まれた美術品です。ナイジェリアのコミュニティにあるべきもので、戻されるべきなのです」

大英博物館のウェブサイトには、「ベニンシティやナイジェリア国立博物館・記念物委員会(NCMM)とは良好な関係を築いている」と書かれているが、2021年10月にナイジェリアの連邦情報文化省から返還を求める文書を受け取ったことは認めている。

同館に懸念を抱いているのはナイジェリアだけではない。同館にパルテノン神殿の大理石が所蔵されている、ギリシャのリナ・メンドーニ文化相は、地元紙To Vimaに、「今回のような事件が発生した場合、すべての所蔵品の安全性について疑問を持たざるを得ません」とコメントしている。(翻訳:編集部)

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