T&Y GALLERYがLAのアート・ディストリクトにオープン! 「日本と海外の架け橋に」
天王洲のTERRADA ART COMPLEXに居を構えるT&Y Projectsが、LAに新拠点「T&Y GALLERY」をオープンした。広さ約370平方メートルにもなる1930年代のファクトリー跡地から、リアルな日本文化の発信を目指す。
70年代からアートだけでなくあらゆるカルチャーのエピセンターとしてシーンを牽引してきた、ロサンゼルスのアート・ディストリクトの一角に、日本のアートコレクター、栗田裕一が率いるT&Y Projectの新拠点となるT&Y GALLERYがオープンした。
LAのダウンタウン東側に広がるアート・ディストリクトは、かつては工場が軒を連ねる活気のある街だったが、戦後、より広くて安い場所に工場が移転していくにつれ衰退の一途を辿ることとなる。そこにチャンスを見出したのが、アーティストたちだった。彼らは廃墟となった工業用の建物をアトリエに変え(当時は住居としてこうした建物を使用することは違法だった)、アンダーグラウンドな独自の文化を醸成していった。その後、90年代半ばにこの一帯がアート・ディストリクトに指定されると、多数のギャラリーがこの地域に進出し、2016年にはスイス発のメガギャラリー、ハウザー&ワースも巨大な製粉工場跡地に支店をオープン。よりメインストリームなLAのアート発信地として、世界的な認知を獲得した。
アート・ディストリクトの新メンバーとなったT&Y GALLERYは、ハウザー&ワースに隣接する元工場のれんが造りの躯体を生かした、広さ約370平方メートル、天高約6メートルの開放的な空間だ。2021年秋に、「国内外の若手アーティストやコレクター、美術評論家、キュレーターなど、次世代の文化的実践者を育成するプログラムと助成を目的に」東京・天王洲のTERRADA ART COMPLEXにビューイングスペースを開設した栗田は、かねてから標榜していた「日本と世界の架け橋」としての役割をさらに加速させるべく、今回のLA進出を決めたという。
「日本におけるアート産業は今、かつてない盛り上がりを見せているものの、世界的に見れば、富裕層に占めるコレクターの割合はまだまだ低く、世界に紹介されていない日本のアーティストも多数存在します。その意味でも、アート先進国の1つであるアメリカのロサンゼルスに拠点を構えることで、ローカルのコレクターや著名人にも、まだあまり知られていない日本の優れたアーティストや文化に触れてもらえる機会を創出できるのではないかと考えました。そうしてお互いの文化交流の場となれることを願っていますし、リアルな日本文化の発信に繋がると信じています」
そう語る栗田がT&Y GALLERYのこけら落としの展覧会として企画したのは、花井祐介、ハービー・フレッチャー、バリー・マッギーの3人のアーティストによるグループ展「Shapeshifter」(2023年8月26日〜9月30日まで)。Shapeshifterとは、変幻自在に姿かたちを変える人や妖怪を指す言葉だが、このタイトルに矛盾しない、業界の慣習や規定、あるいは既成概念にとらわれず自身の表現を追求してきたアーティストたちの作品を並列して見せる意欲的な展示であり、本展のために制作された3人によるコラボレーション作品も展示される。75歳のハーヴィーは、言わずと知れた西海岸サーフカルチャーのパイオニアであり、ストリートアーティストとして研鑽を積んだバリーは、今やアメリカを代表するアーティストとしての地位を確立している。若い頃に西海岸のカルチャーに魅せられた栗田、そして花井にとっては、自身の原点にも迫る展覧会と言えるだろう。
「わたしの親友である花井くんと、われわれの憧れでもある西海岸ストリートカルチャーを代表するレジェンド、ハーヴィーとバリーに参加してもらえたことを、本当に光栄に思います」
栗田は東京と同じく、「アート作品だけではなく家具やデザインも楽しんでほしい」という思いから、LAでもジャン・プルーヴェやピエール・ジャンヌレ、日本の建築家・清家清の作品などを織り交ぜた空間をつくり上げた。「日本のデザインカルチャーを発信する“T&Y GALLERYらしさ”を発揮できるような展覧会を企画していきたい」と意気込みを見せるギャラリスト栗田裕一が次に計画しているのは、日本のデザインカルチャーに関わる展覧会だという。T&Y ProjectsとT&Y GALLERYが連鎖反応して何が起きるのか。今後に期待したい。
T&Y GALLERY
住所:821 E 3rd. Los Angels, CA 90013, USA
開館時間:11:00〜18:00
https://www.tandygallery.com/