ARTnewsJAPAN

Supremeのクリエイティブディレクター、トレメイン・エモリーが退任。アーティストとのコラボに「組織的人種差別」があった?

Supremeのクリエイティブ・ディレクター、トレメイン・エモリーが、同社の「組織的人種差別」を理由に退任した。アーティスト、アーサー・ジャファとのコラボレーションにおいて、Supremeの態度に問題があったと主張している。

Supremeのクリエイティブ・ディレクターを退任することがわかったトレメイン・エモリー。Photo: ROB KIM/GETTY IMAGES

Supremeを正式に去ったトレメイン・エモリーは、自身のインスタグラムに、アーティストで映画監督のアーサー・ジャファとのコラボレーションにおいて、Supremeのジャイファに対する態度に問題があったと書いている。映画『Love Is the Message, the Message Is Death』(2016)で知られるジャファがSupremeのために何をプロデュースすることになっていたのか、あるいはこのコラボレーションプロジェクトがどこまで進んでいたのか、現時点では公式に明らかにされていない。

しかし同じ投稿によると、Supremeのデザインスタジオで働く「数少ない黒人スタッフの一人」が、黒人が絞首刑に処される様子や、解放奴隷のゴードンが背中に鞭で打たれる姿が描かれたコラボアイテムなど世に出すべきではない、と上層部に訴えたことから、エモリーに事前に知らされることなくこのコラボは「密かに中止された」という(皮肉なことにこのスタッフは、エモリーよりも前に退職している)。

コラボアイテムの詳細は不明だが、恐らくこの黒人スタッフが指していたのは、ジャファが自身の作品に度々流用してきた、ある奴隷の写真のことと考えられる。この写真は現在、ワシントンD.C.のナショナル・ポートレート・ギャラリーが所有しているが、同館は、被写体の歴史的誤認を考慮し、作品のタイトルをピーター(以前は「ゴードン」と題されていた)に変更している。

エモリーの退任を伝えたファッションニュースメディア、Business of Fashionは、Supremeの声明として、ジャファとのコラボプロジェクトは「中止されていない」と伝えている。さらに同社は、エモリー退任のきっかけとなった出来事の背景にある「エモリーの主張」には強く反対するとも説明。一方のエモリーは、この声明は「Supremeを含む、白人所有の企業の大半に潜む、組織的な人種差別を隠すための嘘」であると糾弾している。

US版ARTnewsは代理人を通じてジャファ、そしてSupremeにコメントを求めたが、現時点で回答は得られていない。

アフリカ系アメリカ人のエモリーは、2016年から2018年までカニエ・ウェストのクリエイティブ・コンサルタント及びブランド・ディレクターとして活躍し、2019年に自身のブランド「Denim Tears(デニム・ティアーズ)」を設立。「Denim Tears」では、Levi’s®とCactus Plant Flea Marketとのトリプルコラボとして、アーティスト、デイヴィッド・ハモンズの代表作である「African American Flag」をデザインに採用したプロダクトを発表したこともある。

2022年、Supremeがエモリーをクリエイティブディレクターに指名すると、業界の内外から、長らくブランドイメージの刷新に苦戦してきたブランドがついに自らを変革し始めた、と評価する声が上がっていた。アメリカのカルチャーメディア『Complex』は、白人優位なファッション業界で黒人モデルや黒人アーティストと積極的に仕事をしてきたエモリーは、「同世代のヴァージル・アブロー同様、グラフィックTシャツ、パーカー、スニーカーのあり方を再定義し、新しい価値観を業界にもたらしたデザイナーの代表」と称えている。(翻訳:編集部)

from ARTnews

あわせて読みたい