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2024年ヴェネツィア・ビエンナーレのブラジル館代表は、初の先住民族アーティスト。名称も先住民族由来の「ハハウプア館」に変更

2024年ヴェネツィア・ビエンナーレブラジル館の代表アーティストにグリセリア・トゥピナンバが選ばれた。彼女は、先住民族アーティストとして初めて単独で同国のパビリオンに参加することになる。

2024年ヴェネツィア・ビエンナーレのブラジル館代表アーティストに選ばれたグリセリア・トゥピナンバ。Photo: Courtesy Fundacao Bienal De Sao Paulo

2024年ヴェネツィア・ビエンナーレにおいて、「ブラジル館」は「ハハウプア(Hãhãwpuá)館」に改名される。この名称は、ブラジル先住民族パタショー族が、ポルトガル人によって植民地化される以前、自ら住む場所をそう呼んでいたことに由来する。パビリオンの発表によると、この地域にはかつて「ほかにも多くの名前があった」という。

同ビエンナーレにおけるパビリオン名の変更は、2022年の北欧パビリオンが記憶に新しい。北欧の先住民族サーミのアーティストによる展示を行うことに敬意を表して、「サーミ館」に変更されたのだ

ブラジル館と同様に、アメリカ館でも画期的な出来事が起こっている。インディアンのチョクトー族ミシシッピ・バンドの一員で、チェロキー族の血を引くジェフリー・ギブソンが、初の先住民による代表アーティストに選ばれた

さて、ハハウプア館の代表を務めるグリセリア・トゥピナンバは、今回のパビリオンを代表する初の先住民族のアーティストとなるが、ブラジル館に出展した経験のある先住民族のアーティストは、1966年に参加したペルー先住民の母とブラジル人の父の間に生まれた画家、チコ・ダ・シルヴァがいる。

トゥピナンバ族の一員であるグリセリアは、地元の森林が企業によって農業用地に変えられ、破壊されることに反対し続けている。ハハウプア館では、トゥピナンバ族が大切にしている森の中で擬態しながら暮らす鳥、カポエイラにちなんで、「Ka'a Pûera: We are walking birds」という展示を行う予定だ。

ブラジル国内で、活動家としても知られるグリセリアは、2010年、警察の蛮行について発言したことによって、当時まだ乳児だった自身の子どもとともに2カ月間投獄された。彼女は、映像作品を通じてトゥピナンバ文化の保護にも力を注いでおり、現在、サンパウロ美術館で展示されている作品の中にも、トゥピナンバ族にとって重要な工芸品であるマントの生産に焦点を当てたものがある。

ハハウプア館のキュレーションを担当するアリッサナ・パタクソー、デニウソン・バニワ、グスタボ・カボコ・ワピチャナは声明で、パビリオンの展示に込めたメッセージについてこう説明している。

「私たちは、周縁に位置し、非領土化され、不可視化され、投獄され、領土権を侵害された先住民族の人々を覚えています。彼らは、私たちが人間であり、鳥であり、記憶であり、自然であることを信じて、私たちに抵抗を呼びかけているのです」

ハハウプア館はグリセリアが代表アーティストとしてクレジットされるが、彼女のコミュニティから他のアーティストを招いて共作する予定だ。誰が招待されるかは、まだ発表されていない。(翻訳:編集部)

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