今週末に見たいアートイベントTOP5: 約140点が集結する50年ぶりの大キュビスム展、リチャード・セラが新作ドローイングを発表
関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!
1. リチャード・セラ「Circle, Diamond, Triangle」(ファーガス・マカフリー東京)
知覚や体験に影響を与える、円・ひし形・三角形のドローイング
金属の板による重量感ある巨大彫刻や、黒色で描く独特な質感のペインティングで世界的に評価の高い、アメリカのリチャード・セラ。その作品たちは、展示空間自体を変容させてきた。今回も、ギャラリー空間に合わせて制作したドローイングによるインスタレーションを発表。80代半ばを迎えた作家の、洗練された感覚を体感できる。本展にあわせて書籍『リチャード・セラ/ハル・フォスター 彫刻にまつわる対話』の日本語訳版も2024年2月に出版される。
ギャラリーの壁に設置されるのは、それぞれ直径や縦横が3メートル近い黒色の円、ひし形、三角形のドローイング。これらは絵画ではなく、部屋に場所や空間を描いたもので「純粋にあなたがいる部屋の知覚や感覚、または体験に影響を与えるためにつくられた」作品だという。また、形は重量、質量、体積を暗示するものだとも話し、正方形は長方形よりも、台形はひし形よりも大きな重量を有し、三角形は軽く、とても素早い形なのだという。黒色は光を閉じ込める、という考え方も作家ならではだ。「黒が光を請け負うことで、観る側の読み取り方が異なり、ほかの色ではなしえない方法で重さの可能性に対処する提案を示している」と説明する。
リチャード・セラ「Circle, Diamond, Triangle」
会期:9月30日(土)~ 2024年1月27日(土)
会場:ファーガス・マカフリー東京(東京都港区北青山3-5-9)
時間:11:00 ~ 19:00
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2. パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展―美の革命 ピカソ、ブラックからドローネー、シャガールへ(国立西洋美術館)
50年ぶりの大キュビスム展。初来日の50点など名品が集結
日本では50年ぶりとなる「キュビスム」の大型展覧会。近現代美術の名品を有するパリのポンピドゥーセンターから、重要作品50点以上が初来日する注目の企画だ。主要作家約40人の絵画、彫刻、版画など約140点で、キュビスムの興りから発展までの流れを網羅的に紹介する。中でもピカソの12点のうち《肘掛け椅子に座る女性》、ブラックの15点のうち《大きな裸婦》は見逃せない名作。ポンピドゥーセンターを象徴する幅4メートルの大作、ロベール・ドローネーの《パリ市》も初来日するなど、会場で目移りしてしまいそうだ。
人や物を幾何学的な立体に分解して平面に再構成する「キュビスム」は、多くの画家が一度は通るという絵画様式。前身となるセザンヌやルソーから、キュビスムの祖として1900年代初期に共同で実験をしたピカソとブラック、2人とは異なるアプローチでキュビスム旋風を巻き起こした「サロン・キュビスト」などを時間軸に沿ってたどる。キュビスムを吸収しながら独自の画風を確立したシャガール、第1次世界大戦を経た後のル・コルビュジエ、キュビスムの源泉の一つとなったアフリカの彫刻なども紹介する。
パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展―美の革命 ピカソ、ブラックからドローネー、シャガールへ
会期:10月3日(火)~ 2024年 1月28日(日)
会場:国立西洋美術館(東京都台東区上野公園7-7)
時間:9:30 ~ 17:30 (金曜と土曜は20:00まで、入場は30分前まで)
3. デイヴィッド・シュリグリー「DO NOT TRUST THE MIRROR」(ユミコチバアソシエイツ)
英国作家の、ユーモアとアイデアに満ちた作品世界
イギリスらしいブラックユーモアを効かせた作風で知られる、1968生まれのデイヴィッド・シュリグリー。これまでの作品には、「I ' M DEAD」と書かれたプラカードを持って立つ剥製の犬や猫の立体作品なども。ロンドンのトラファルガー広場に、“いいね”と長すぎる親指を立てた高さ7メートルの巨大彫刻《Really Good》を出現させて、世を驚かせたこともある。世界が注目するターナー賞へのノミネートや、大英帝国勲章(OBE)の受賞履歴があり、2017年には水戸芸術館でも個展が開催された。
今回の展覧会では、シュリグリーの代表作でもあるテクストとイメージを組み合わせた絵画を中心に展示する。一見ポップな作風ながら、添えられたテクストを読めば、そこに込められた皮肉や社会風刺が立ち現れてくる。だが難解さはなく鑑賞者を選ばないのは、「芸術は誰のためのものでもある」という信念によるものだという。アイデアと批評性に満ちたシュリグリーの作品世界を味わいたい。
デイヴィッド・シュリグリー「DO NOT TRUST THE MIRROR」
会期: 11月18日(土) ~ 2024年 2月3日(土)※12月28日(木)~ 2024年1月19日(金)冬期休廊
会場:ユミコチバアソシエイツ(東京都港区六本木 6-4-1 六本木ヒルズ ハリウッドビューティープラザ 3F)
時間:12:00 ~ 19:00
4. MADSAKI「This Used to Be My Playground」(カイカイキキギャラリー)
アメリカのストリートカルチャーが原点。孤独が生み出した新境地
MADSAKI は1974年に大阪で生まれ、6歳から30歳までをアメリカで過ごしたアーティスト。アメリカのストリートカルチャーを吸収しながら制作を本格化させ、挑発的な言葉や世界的名画を題材にしたスプレーアート、妻のヌード画の連作など、多様な作品を見せてきた。現代美術家の村上隆がインスタグラム上でMADSAKIを見つけて以来、村上が主宰するカイカイキキギャラリーでも度々個展を開催。昨年末の個展後に「ひとつの章の終わり」を感じたと言い、今展では「本能的な感覚と使命感に突き動かされながら、自分自身のために描き始めた」新しいペインティングシリーズを披露する。
題材にしたのは、海外の著名なアーティストも出演するパーティー「マイルドバンチ」でのシーン。帰国後、東京で孤独感を抱えたままだったMADSAKIが、ようやく見つけた居場所がマイルドバンチだったという。DJブースの内側から見た、ターンテーブルに向かう仲間や熱狂する観客などを、これまでとは違う筆致で表現した。心に寂しさを抱えた作家が、都会の夜の灯りのなかに得た“癒し”が描かれる。
MADSAKI「This Used to Be My Playground」
会期:11月24日(金)~ 12月14日(木)
会場:カイカイキキギャラリー(東京都港区元麻布2-3-30 元麻布クレストビルB1F)
時間:11:00 ~ 19:00
5. 金子國義「おめかし」展(Galerie LIBRAIRIE6)
多くの表現者たちを魅了した、金子國義の美意識
「耽美的」「エロティシズム」と評される独特な画風で、多くの人物像を描いた金子國義(1936‐2015)。日大芸術学部在学中に歌舞伎舞台美術家の長坂元弘氏に師事した経験を持つが、絵は社会に出てから独学で描き始めた。その才能に小説家の澁澤龍彦がいち早く目をとめて装画を依頼し、以降絵画だけでなく、着物デザインや写真など、晩年まで多岐にわたる創作を行った。
その絵に通底する絶対的な美意識は、他ジャンルの表現者たちも魅了してきた。十八代目中村勘三郎が襲名披露口上の美術を頼んだほか、ロックバンドL'Arc〜en〜Cielのボーカル・hydeも作品を愛蔵する一人。7年ぶりの個展となる本展では、いまなお人気が続く金子の、「優美でエレガント」な作品に注目。油絵、ドローイング、版画を25点前後紹介する。
金子國義「おめかし」展
会期:12月9日(土)~ 24日(日)
会場:Galerie LIBRAIRIE6(東京都渋谷区恵比寿南1-12-2 南ビル3F)
時間:12:00 ~ 19:00 (日曜は18:00まで、24日は17:00まで)