今週末に見たいアートイベントTOP5: 「ゴールデンカムイ」作者の愛蔵品も! アイヌアートの多様性、ジェネラティブアート etc. 恵比寿映像祭
関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!
1. AINU ART―モレウのうた(北海道立近代美術館)
「ゴールデンカムイ」作者の愛蔵品も。現代に息づくアイヌアートの伝統
幾何学的なデザインが特有の美を生みだすアイヌ文様。今展で注目するのは、「モレウ」と呼ばれる渦巻き文様だ。モレウで彩られた先人たちの木工芸や染織だけでなく、現代作家10人の作品を併せて展示することで、アイヌアートの多様性と豊かな造形力が立ち現れる。展示は2部構成で、「Ⅰ 先人たちのモレウ」では、国立アイヌ民族博物館やアイヌ民族文化財団などが所蔵する19世紀から20世紀のアイヌコレクションを紹介。衣服、ニンカリ(耳飾り)、タマサイ(首飾り) 、イクパスイ(祭祀の道具)などが並ぶ。「Ⅱ 十人のモレウ」では、現代作家たちの近作と新作約100点で、伝統が現代に息づく様子を見せる。
参加する10作家は、小笠原小夜(イラストレーション)、貝澤幸司(木彫)、貝澤徹(木彫)、川村則子(布アート)、下倉洋之(金工)、関根真紀(デザイン)、西田香代子(刺繍)、藤戸康平(ミクストメディア)、藤戸幸夫(木彫)、結城幸司(版画、映像)。藤戸康平のモビール作品《ぐるぐるモレウ》は、壁面に映る渦巻模様の影が印象的だ。結城幸司が原案・木版画を手掛けたアニメーション作品「七五郎沢の狐」は全編アイヌ語で語られる。先ごろ実写映画も公開された漫画「ゴールデンカムイ」の作者、野田サトルがコレクションする藤戸幸夫のマキリ(小刀)なども公開される。木彫り熊の産地として知られる八雲町に「農村美術」という概念を紹介した、尾張徳川家第19代当主・徳川義親に関するトピック展示もある。
AINU ART―モレウのうた
会期: 1月13日(土)~ 3月10日(日)
会場:北海道立近代美術館(北海道札幌市中央区北1条西17丁目)
時間:9:30 ~ 17:00 (入場は30分前まで)
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2. [VOID+STOCK]exhibition: part1(void+)
5作家の知られざる「ストック品」にフォーカスした初の展覧会
現代美術をキュレーションするギャラリーと、サロンスペースを備えた「void+」。同スペースが、アーティストから期間限定で作品を預かり、展示・販売する「アートのセレクトショップ」として「VOID+STOCK」を4年前にオープンさせた。今回初開催となる展覧会は、アーティストのアトリエに眠る作品の再発掘がテーマだ。5人のアーティストの、これまで人の目に触れることの少なかった「ストック品」に未発表作品や新作を加えて、それぞれの作品が調和する空間を創り上げる。
参加作家は、見覚えのある場面や、聞き覚えのある事象などを大胆な余白を用いて抽出し、本来の背景や意味さえもそぎ落とされた、抽象とも具象とも取れない独自解釈の作品を制作するO JUN、油絵の具をそのまま半透明のアクリル板に溶かす独自の手法で描く庄司朝美。そのほか、内海聖史、五月女哲平、東恩納裕一。
[VOID+STOCK]exhibition: part1
会期:1月19日(金)~2月12日(月・祝)
会場:void+( 東京都港区南青山3-16-14)
時間:12:00 ~ 19:00(最終日は17:00まで)
3. 印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵(東京都美術館)
米ウスター美術館の所蔵品から、知られざるアメリカ印象派の魅力を紹介
19世紀後半、芸術の都パリには国外からも多くの画家が集った。そこで印象派に触れ、学んだ画家たちは、新しい絵画の表現手法を自国へ持ち帰った。今年印象派の誕生から150周年を迎えることにちなんで、西洋美術の伝統を覆した印象派の革新性とその広がり、とりわけアメリカ各地で展開した印象派の諸相にスポットを当てる。
本展は、1898年の開館当初から印象派の作品を積極的に収集してきたアメリカ・マサチューセッツ州のウスター美術館から、ほとんどが初来日となる印象派コレクションを中心に、日本でもよく知られるモネ、ルノワールなどフランスの印象派に加えて、国際的に活動したジョン・シンガー・サージェント、そしてアメリカの印象派を代表するフレデリック・チャイルド・ハッサムらの作品約70点を紹介する。これまで日本で紹介される機会の少なかった、知られざるアメリカ印象派の魅力に触れる機会となるだろう。
This exhibition was organized by the Worcester Art Museum
印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵
会期:1月27日(土)~ 4月7日(日)
会場:東京都美術館(東京都台東区上野公園8-36)
時間:9:30~17:30(金曜は9:30~20:00)
4. 恵比寿映像祭2024「月へ行く30の方法」(東京都写真美術館ほか)
荒川ナッシュ医やダラ・バーンバウムらが参加。映像をめぐるさまざまな表現に触れる15日間
映像をめぐる様々な選択肢に目をむけ、「映像とは何か」について考える国際フェスティバル。今年は「月へ行く方法」という総合テーマを掲げ、期間中はメイン会場である東京都写真美術館と周辺の連携各所で、展示、上映、ライブ、講演、トークセッションなどさまざまな催しが開催される。
恵比寿ガーデンプレイス センター広場の大型ビジョンでは、国内外12作家などによるジェネラティブ・アート作品を上映。東京都写真美術館の2階展示室には、作家と鑑賞者がコミュニケーションを交わしたり、共に思考したりする場が創出される。ロサンゼルスを拠点に活動するパフォーマンス・アーティスト荒川ナッシュ医が、参加型の新作パフォーマンスを行いながら、様々な感情や感性の「間」にあるものを探求するほか、昨年金沢21世紀美術館で個展を開催したアメリカの現代美術作家ダラ・バーンバウムは、1970年代のテレビシリーズ「ワンダーウーマン」の映像を分析することで、テレビドラマが作り出すステレオタイプのイメージと女性に向けられた性的願望を明らかにする。
恵比寿映像祭2024「月へ行く30の方法」
会期:2024年2月2日(金)~2月18日(日)、東京都写真美術館3Fのコミッションプロジェクト(※)は3月24日(日)まで
会場:東京都写真美術館、恵比寿ガーデンプレイス センター広場、地域連携各所ほか
時間:10:00~20:00(18日のみと※は18:00時まで、入場は30分前まで)
5. 川内倫子展「Tomorrow is another day」(MA2 Gallery)
祈り捧げることについて向き合う川内倫子の新旧作を展示
日々の暮らしの中の1場面を切り取りつつ、その中にある生と死の脆さを表現し、国内外で高い評価を得る写真家、川内倫子。2002年には、写真集「うたたね」「花火」などで第27回木村伊兵衛写真賞を受賞した。
恵比寿映像祭2024の地域連携プログラムとなる本展は、世界各地で争いが続く中で、「祈りを捧げることについて向き合う場を、来廊者と共有できたら」という川内の思いから、エルサレムの嘆きの壁や、夜神楽、阿蘇の野焼き、プラネタリウム、自宅から見上げた空など、この地球に根を張り、向き合って世界をとらえようとした「あめつち」シリーズから、プリント作品と未発表の映像作品など新旧作を織り交ぜて展示する。2月23日(金・祝)の15:00~16:30、川内と森美術館アソシエイトキュレーターの徳山拓一によるトークイベントを開催。
川内倫子展「Tomorrow is another day」
会期:2024年2月2日(金)~ 2月24日(土)
会場:MA2 Gallery(東京都渋谷区恵比寿3-3-8)
時間:13:00 ~ 18:00(火曜は予約制)