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今週末に見たいアートイベントTOP5: 草間彌生、ウォーホルらの作品から「中心とは何か」を考える、ジャデ・ファドジュティミが京都との関係性を表現

関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

稲見自在化身体プロジェクト+遠藤麻衣子 「短編映画『自在』」 © 3 EYES FILMS, JST ERATO INAMI JIZAI BODY PROJECT

1. ジャデ・ファドジュティミ 「Connecting in Silence」(タカ・イシイギャラリー 京都)

Jadé Fadojutimi, “The Hedonist”, 2024, acrylic, oil and oil pastel on canvas, 194 x 140 cm © Jadé Fadojutimi. Courtesy of the artist and Taka Ishii Gallery / Photo: Kenji Takahashi

縁を育んできた京都の街との多角的な関係性にフォーカス

1993年生まれで、ロンドンを拠点に活動するアーティスト、ジャデ・ファドジュティミ。彼女の絵画は、力強く印象的な色彩と、油絵の具を厚く塗り重ねることで動的な表情を作り上げ、また、それらを削り落としたり引っかいたりすることで隠れていた色の層を露わにする。そして絵の具が乾く間際にオイルパステルで素早く線を描き、力強さと情感を加える。作品は植物や壮大な風景を思わせるが、そこには彼女のアイデンティティや経験、思い出が反映されている。作品は世界的に評価され、2021年のリバプール・ビエンナーレ、第59回ヴェネツィア・ビエンナーレに展示されたほか、メトロポリタン美術館、テートなどで作品が収蔵されている。

ファドジュティミはロイヤル・カレッジ・オブ・アートの修士課程に在籍中の2016年、交換留学生として京都市立芸術大学で4カ月間学んだ。以来、コロナ禍の数年を除いて毎年来日をするほど、作家にとって日本、そして京都は特別な場所になっている。京都を舞台に開催される本展は、これまで育んできたこの街との多角的な関係性の集積といえる。伝統的な町家である会場と彼女の唯一無二の表現のフュージョンを楽しみたい。

ジャデ・ファドジュティミ 「Connecting in Silence」
会期:3月16日(土)~ 4月27日(土)
会場:タカ・イシイギャラリー 京都(京都府京都市下京区矢田町123)
時間: 10:00 ~17:30
休館日:日~水曜・祝日

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2. 日本のまんなかでアートをさけんでみる(原美術館ARC)

佐藤時啓「光―呼吸 Harabi#2」197 x 150 cm 2020 ピグメンプリント©Tokihiro Sato

アートを通してさまざまな「中心」を考える

2021年に閉館した東京の原美術館と、別館だったハラ ミュージアム アークが統合して生まれた同館では、豊富な現代美術と東洋古美術のコレクションから、毎年ここから発信する意味や意義を考慮したテーマ性のある展覧会を開催してきた。今回は「日本のまんなか」と称する群馬県渋川市にある同館にちなみ、作品や美術館のあり方などさまざまな視点から「中心とは何か」について考える。

本展では、原美術館の最後の展覧会で展示された、同館とハラ ミュージアム アークをモチーフに制作した佐藤時啓《光-呼吸》全12作品を一挙に公開する。また、草間彌生《ミラールーム (かぼちゃ)》(1991/1992)、オラファー・エリアソン 《Sunspace for Shibukawa》(2009)、名和晃平《PixCell [Zebra]》(2003) のほか、森村泰昌、磯崎新、アンディ・ウォーホル、ロバート・メイプルソープなど現代美術の巨匠を含む作品を屋内4部屋、屋外で展示する。

日本のまんなかでアートをさけんでみる
会期:3月16日(土)~ 9月8日(月)
会場:原美術館ARC(群馬県渋川市金井 2855-1)
時間: 9:30 ~16:30(入場は30分前まで)
休館日:木曜(5月2日、8月を除く)


3. みんぱく創設50周年記念特別展「日本の仮面――芸能と祭りの世界」(国立民族学博物館)

八朔太鼓踊りのメンドン(鹿児島県三島村) 国立民族学博物館提供

日本に伝わる「仮面」の芸能や祭りの歴史と文化を紹介

日本各地では古来より、仮面が登場する芸能や祭りが行われてきた。本展は、その「仮面」にクローズアップする。鹿児島県硫黄島で旧暦8月1日と2日の両日、大きな耳を持つ赤い仮面をつけた神が現れて暴れまわり、神木で人々の悪霊を祓う「メンドン」など、仮面をつけた役が登場する各地の芸能や祭りの様相を中心に、その歴史やなりたちなどを紹介しながら、仮面と人びとの多様な関係について紹介する。

本展に関連して、4月20日(土)同館教授の笹原亮二が、日本の仮面の多様性に富む全体像を、「仮面の歴史」「祭りや芸能の中の仮面」「仮面の諸相」「ヒーローと仮面」といった特別展の構成に即して紹介する「日本の仮面」や、5月18日(土)同館教授の福岡正太が、写真と映像で同館が所蔵する東南アジアの仮面を概観し、ジャワ島を例に仮面芸能とその芸能にたずさわる人びとについて語る「東南アジアの仮面」(いずれも13:30~15:00、先着400人、要申し込み)など、会期中はさまざまな催しが企画されている。

みんぱく創設50周年記念特別展「日本の仮面――芸能と祭りの世界」
会期:3月28日(木)~ 6月11日(火)
会場:国立民族学博物館(大阪府吹田市千里万博公園10-1)
時間: 10:00 ~17:00(入場は30分前まで)
休館日:水曜


4. 「未来のかけら: 科学とデザインの実験室」(21_21 DESIGN SIGHT)

稲見自在化身体プロジェクト+遠藤麻衣子 「短編映画『自在』」 © 3 EYES FILMS, JST ERATO INAMI JIZAI BODY PROJECT

科学技術×デザインで何が起こる?山中俊治が仕掛ける実験場

「未来」は壮大で漠然としており、だからこそクリエイターたちは未来に対するさまざまな可能性に思いをはせてきた。本展では、展覧会ディレクターに幅広い工業製品のデザインや、先端技術を具現化するプロトタイプの研究を行うデザインエンジニアの山中俊治を迎えた。

会場では山中が大学の研究室でさまざまな人々と協働し生み出してきたプロトタイプやロボット、その原点である山中のスケッチを紹介するとともに、構造や仕組み、人の認知に注目した作品を制作する荒牧悠×折紙工学者舘知宏、稲見自在化身体プロジェクト×映画監督でアーティストの遠藤麻衣子など、専門領域が異なる7組のデザイナー、クリエイターと科学者、技術者のコラボレーションによる多彩な作品を展示する。最先端技術や研究における先駆的な眼差しとデザインが出合うことで芽生えた、「未来のかけら」たちに触れてみてほしい。科学とデザインが織りなす無数の可能性と、想像することの楽しさを体感する機会となるだろう。

「未来のかけら: 科学とデザインの実験室」
会期:3月29日(金)~ 8月12日(月・休)
会場:21_21 DESIGN SIGHT(東京都港区赤坂9-7-6)
時間: 10:00 ~19:00(入場は30分前まで)
休館日:火曜


5. スクリプカリウ落合安奈 刊行記念展「ひかりのうつわ」supported by ARToVILLA(OFS GALLERY)

from Primăvara [Spring],《Vesseles of Light》 2023 © Ana Scripcariu-Ochiai

スクリプカリウ落合安奈が見つめたルーマニアの1年間

美術家のスクリプカリウ落合安奈は、「土地と人の結びつき」をテーマに歴史や土着の祭り、民間信仰など文化人類学的なリサーチを重ね、絵画、写真、映像インスタレーションなどの作品を制作してきた。長年、彼女のもう一つのルーツであるルーマニアをテーマにした作品を制作しており、コロナ禍を経て、このほど1年間の滞在制作を叶えた。

落合はルーマニアで、あえてアナログのフィルムを使い、土地に根ざして暮らす人々や、キリスト教が移入する前の土着の行事や風習、自身の祖父が生まれ育った家など、ルーマニア各地の風景を撮り続けた。その1万500枚あまりのカットからセレクトされた写真を収録した作品集「ひかりのうつわ」の刊行記念として開催される本展では、収録作品を展示する。このシリーズは東京では初披露となる貴重な機会だ。

スクリプカリウ落合安奈 刊行記念展「ひかりのうつわ」supported by ARToVILLA
会期:3月29日(金)~ 4月14日(日)
会場:OFS GALLERY(東京都世田谷区 池尻3-7-3 OFS.TOKYO内)
時間: 12:00 ~20:00
休館日:火・水曜

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