ロエベがリチャード・ホーキンスとのコラボコレクションで表現する新しい「男らしさ」
1月20日、2024年秋冬メンズコレクションをパリ・ファッションウィークで発表したロエベ。クリエイティブディレクターのジョナサン・アンダーソンは、ロサンゼルスに拠点を置くアーティストのリチャード・ホーキンスとのコラボレーションを通じて、ファッション業界における新たな「男らしさ」の提案を試みている。
パリ・ファッションウィーク開催中の1月20日に、2024年秋冬メンズコレクションを発表したロエベ。今回発表されたコレクションの裏には、ロサンゼルスに拠点を置く画家で、カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校(UCLA)の教授を務めるリチャード・ホーキンスの協力があった。
ロエベのクリエイティブディレクターを務めるジョナサン・アンダーソンは、会場を作り上げるためにホーキンスを指名し、アーチ状のステンドグラスがはめ込まれた窓を模したデジタルコラージュの制作を依頼した。窓の中には、ホームビデオのためにポーズをとったり、シャツをさりげなく引っ張ったりしているような動画が続けざまに映されていた。また、ニューヨークで行われる低予算のグループ展をまねるかのように、ホーキンスの絵画が巧妙に会場内に展示されていた。
VOGUE BUSINESSにも記されているように、プラダやルイ・ヴィトンといったラグジュアリーレーベルは、ランウェイ内外で「男らしさの原型」をモチーフにしているように見えた。ロエベも同じようにこのテーマを扱っており、「遊び心とセクシーさを兼ね備えた、新たな男らしさがある」と、VOGUE BUSINESSも記している。
そういった観点から見ると、ホーキンスの作品は新しい男らしさを示すには最適なものだったのかもしれない。ニューヨークタイムズはホーキンスの作品のテーマを「雑誌や服のカタログから切り取られた、見た目のいい若者たち」が集められたものとし、「高尚で無性的」なアート業界に反旗を翻したと2009年に評している。アンダーソンはそれ以来、ホーキンスが手がける作品全体に隠されている手がかりを引き出しているように思える。これによってモデルたちは、着崩した服や緩められたベルト、はだけた胴体を部分的に隠すファーのベストを身にまとってランウェイを往来したのだ。
会場の熱がある程度収まった頃、モデルたちは特大のセーターを身に着けた、か弱い姿で現れた。ジャカード繊のニット、そしてロエベのシグネチャーバッグ「スクイーズ」には、若かりし頃のホーキンスの作品の特徴である無表情な視線や、口を開けた表情があしらわれている。
ファッションをこまめに追いかけている人は、ファッションにおけるホーキンスの影響を今回のランウェイで初めて目にしたことだろう。2012年にニューヨークで開催されたホイットニー・ビエンナーレの目録には、ホーキンスの活動は芸術的慣習を幅広く精査しており、「ときにタブーとされる肉体の表現と、それを見ることの喜び」を探求するものであることが記されている。
それから10年以上が経ち、ホーキンスとロエベのコラボレーションによってミューズという概念を形成してきた異質な要素を解体する機会がアンダーソンに与えられた。そして、こうした取り組みにはホーキンスが描くネット上のミューズと、抽象化された古典的な彫像との混ざり合いが一役買っているのだ。ここ最近アンダーソンは、アーティストとのコラボレーションが将来的に増えることを示唆しており、アートとより密接したプロジェクトを手がけることが目的だと彼は主張している。
「私たちは大規模なギャラリーに展示されているようなものを見せられるよう、全力を尽くしていくつもりです」と、アンダーソンは語る。(翻訳:編集部)
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