ヴェネチア・ビエンナーレからイスラエル排除を求める公開書簡を、イタリア文化大臣が「恥ずべきもの」と非難
著名アーティストやキュレーターたちが、イスラエルのヴェネチア・ビエンナーレ不参加を要求するる公開書簡に署名した。これに対してイタリアの文化大臣は書簡を「恥ずべきもの」と非難し、ビエンナーレからイスラエルを除外しない考えを示した。
2月26日、イスラエルのヴェネチア・ビエンナーレへの不参加を要請する公開書簡が出されると、数千にものぼるアーティストが署名。これを受け、イタリア文化大臣は2月27日に声明を出し、イスラエルを排除しないことを示した。
公開書簡はイスラエルのパビリオンを「虐殺館」と表現しており、ビエンナーレを「虐殺を行うアパルトヘイト国家を表舞台に出している」と非難している。また、ビエンナーレはロシアによるウクライナ侵攻については2022年に声明を出したものの、ハマスによるイスラエル攻撃が2023年10月7日に始まって以来、3万人近くが犠牲になっているパレスチナ・ガザ地区については依然として無言を貫いていることから、ビエンナーレの「矛盾」も指摘している。
この書簡には、ヴェネチア・ビエンナーレに参加した作家や、ターナー賞の受賞作家をはじめとする人々が署名している。
ビエンナーレの運営側は、この書簡に対する反応を今のところ示していない。だが、イタリアの文化大臣ジェンナーロ・サンジュリアーノは2月27日未明、簡潔な声明を発表し、この書簡を「恥ずべきもの」と非難。これに署名した人々は、イタリア文化の自由を根底から覆す恐れがあると指摘した。
「イスラエルには芸術表現の権利があるだけでなく、無慈悲なテロリストから冷血な攻撃を受けているこのような時にこそ、自国民の声を届ける義務がある。ビエンナーレはこれからも自由、出会い、そして対話が存在する場であり続ける。検閲や不寛容の場ではない。文化とは人と国家の架け橋であって、障壁であってはならない」
サンジュリアーノ文化大臣の声明を受け、今回の公開書簡を作成するために結成された団体「Art Not Genocide Alliance」は次のような声明をSNSに投稿している。
「ある国家が別の国家の排除に関与し、それぞれの国民が分断された壁の向こう側に置かれている場合、文化は『人と国家の架け橋』にはなり得ない」
イスラエルは、ヴェネチア・ビエンナーレに1950年から国別パビリオンを常設している国の一つだ。今回のビエンナーレには、ルース・パティールがイスラエルの代表作家に選出されている。(翻訳:編集部)
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