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パウル・クレーとアレクサンダー・カルダーの「形而上学的」対話。ニューヨークで大規模展が開催

世界有数のコレクションに所蔵されているパウル・クレーの重要作品と、動く彫刻「モビール」の生みの親、アレクサンダー・カルダーの作品を集めた大規模なギャラリー展が来月ニューヨークで開幕する。

パウル・クレー《Sonnenuntergang》(1930)、シカゴ美術館蔵、メアリー&リー・ブロックからの寄贈。Photo: © 2024 Artists Rights Society (ARS), New York / VG Bild-Kunst, Bonn

4月18日から6月8日までニューヨークのディ・ドナ・ギャラリーズで行われる展覧会、「Enchanted Reverie: Klee and Calder(幻想の魅惑:クレーカルダー)」には、国際的なパブリックコレクションや個人が所蔵する40点の絵画、彫刻、ドローイングなどが出展される。

ギャラリーオーナーのエマニュエル・ディ・ドナは、この企画展は2人のアーティストが形而上学的な要素をどう取り入れたかを知る手がかりになるとして、こう述べた。

「2人とも、自然界の裏側にある秩序、自然の背後にある神的な秩序を、宗教を抜きに観察することに深い関心を抱いていました。芸術がどのように機能するのか、芸術が鑑賞者の感情に何を引き起こすのかについて、明らかに同じ信念を共有していたのです」

ディ・ドナがこの企画展を思いついたのは、個人蔵のクレー作品《Unterwasser-Garten(水中庭園)》(1939)を調べていたときだったという。その隣には、研究のために読んでいたカルダーの本が置いてあった。

「この2つが並んだ光景には心を惹きつけるものがありました。とても自然で、詩的な感じがして、これはもっと探求するべきだと思いました」

アレクサンダー・カルダー《Red Maze III》(1954)、カルダー財団蔵。Photo: ©2024 Calder Foundation, New York / Artists Rights Society (ARS), New York

ディ・ドナ・ギャラリーズの展覧会には、クレーの遺族、バイエラー財団、メトロポリタン美術館シカゴ美術館などから作品が貸し出されている。その中には、カルダー自身がコレクターから手に入れたクレーの《Unterwasser-Garten》もある。

企画に協力したカルダー財団はこれまでも、イヴ・タンギー、フランシス・ピカビア、フィッシュリ/ヴァイス、リチャード・タトルといったアーティストとカルダーの作品を組み合わせた展覧会を数多く開催している。

カルダーの孫で同財団の会長を務めるアレクサンダー・S・C・ロウワーは、US版ARTnewsの取材にこう答えた。

「私は、カルダーに影響を与えた芸術家、意味深いインスピレーションを与えたアーティストにとても興味があるのです」

実際、クレーがそうした作家の1人だったことを裏付ける証拠がある。1962年に、どんな画家に心を奪われたかと聞かれたカルダーは、「ゴヤ、ミロ、マティス、ボス、そしてクレー」と答えていた。

他のアーティストとの展覧会だけでなく、カルダーのキャリアのさまざまな側面に光を当てた個展も世界中で絶え間なく開かれている。その仕事は、ジュエリーからモビール、1920年代から30年代にかけてのパリ時代の作品まで幅広い。

この20年間でさらに知名度が上がったカルダーだが、その人気は動きの激しいアート市場でも安定しているとロウワーは言う。

「人々から愛されているカルダーの作品には、流行り廃りがありません。カルダー作品を展示する場、そしてカルダーの全ての作品は、私たちが日々のせわしないペースを少し落として身の回りに美しい瞬間があることに気づき、それを楽しむことの一助になると思います」(翻訳:石井佳子)

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