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  • 2024.05.10

今週末に見たいアートイベントTOP5: 石岡瑛子の仕事と生涯を約500点で振り返る、ミランダ・ジュライの遊び心溢れる東京初個展

関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

「MIRANDA JULY: F.A.M.I.L.Y.」(プラダ 青山店)展示風景

1. 没後70年 戦争を越えて―写真家ロバート・キャパ、愛と共感の眼差し―(東京富⼠美術館)

共和国軍兵⼠の死(崩れ落ちる兵⼠)、エスペホ近郊、コルドバ戦線、スペイン 1936年9⽉初旬ロバート・キャパ 東京富⼠美術館蔵

伝説の写真家、ロバート・キャパの軌跡をたどる写真展

戦争の世紀と呼ばれた激動の 20 世紀、カメラを武器にスペイン内戦や第2次世界⼤戦など5つの戦場を駆け抜けた伝説の写真家ロバート・キャパ。2024年はインドシナの戦場で亡くなって70年の節目を迎える。ジャーナリストを志したハンガリーの⻘年アンドレ・フリードマンが、伝説の写真家「ロバート・キャパ」となるまでの軌跡を、彼の代表作によってたどる。

ジャーナリズムの歴史に残る数々の写真を撮影した彼のレンズは、過酷な戦場にあろうと⽇常の街中にあろうと、懸命に生きる⼈間の、苦しみや悲しみ、楽しみや喜びなど、ありのままの素顔を捉えている。そこには他者に対する愛と共感の眼差しが溢れている。

本展では東京富士美術館が所蔵するヴィンテージ・プリントのコレクション75点を2期に分けて展⽰するほか、1954年⽇本滞在中に撮影した多数の写真を紹介、キャパの最後の旅となったインドシナで所持していたニコンSのカメラも特別公開される。

没後70年 戦争を越えて―写真家ロバート・キャパ、愛と共感の眼差し―
会期:4月9日(火)~ 6月23日(日)
会場:東京富士美術館(東京都八王子市谷野町492-1) 
時間:10:00 ~17:00(入場は30分前まで)
休館日:月曜

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2. 民藝 MINGEI―美は暮らしのなかにある(世田谷美術館)

日本民藝館「生活展」 1941年 会場写真

「民藝」のこれまでと、これからを全3章で探る

約100年前に思想家の柳宗悦が説いた民衆的工藝、「民藝」。無名の職人が作る民衆の日用雑器など、日々の生活のなかにある美を慈しみ、素材や作り手に思いを寄せる、この「民藝」のコンセプトはいま改めて必要とされ、私たちの暮らしに身近なものとなりつつある。

本展では第1章で柳宗悦が設立した日本民藝館で1941年に開催された「生活展」の再現を試みる。第2章では、日本のみならず朝鮮半島の各所、中国や欧米などへ旅して収集した民藝の品々を「衣・食・住」に分類しそれぞれに民藝美を見出した柳の視点をひも解く。また、第3章では、柳宗悦の没後の民藝運動により注目を集めた国内5つの産地からそこで働く人々の「いま」を紹介するほか、現在の民藝ブームの先駆者とも言えるテリー・エリスと北村恵子によるインテリアの実例を、現代の生活に溶け込む「これからの民藝スタイル」としてインスタレーション展示する。

展覧会期間中の毎週土曜の13:00~15:00、紙を折って染めて、美しい模様のじゃばら式ノートを作る100円ワークショップが行われる。そのほか5月19日(日)に本展監修者である森谷美保の講演会、6月1日(土)に濱田琢司、テリー・エリス、北村恵子のトークイベント、6月9日(日)に鳥越竹細工作家の柴田恵による公開制作も予定されている(いずれも15:00~16:30)。

民藝 MINGEI―美は暮らしのなかにある
会期:4月24日(水)~ 6月30日(日) 
会場:世田谷美術館(東京都世田谷区砧公園1-2)
時間:10:00 ~18:00(入場は30分前まで)
休館日:月曜


3. 菅木志雄 「あるというものはなく、ないというものもない」(小山登美夫ギャラリー六本木)

素空 Elemental Space 2023 wood, acrylic h.188.2 x w.139.0 x d.8.5 cm ©️Kishio Suga

「もの」と向き合い続けたアーティストが見せる新しい世界

1944年生まれの菅木志雄は、1960年代末〜70年代の芸術運動「もの派」の主要メンバーとして活動。その後、50年以上独自の世界への視点と鋭敏な感覚で作品制作を行い、戦後日本美術を代表するアーティストとして新たなフィールドを切り開いてきた。菅は同ギャラリーで2015年から毎年精力的に新作を発表しつづけており、本展で9回目となる。

菅の作品は木、石、金属、ロープなどのありふれたものを、時に融和、時に対峙させながら配置する。それはものを単独で存在させるのではなく、「もの」と「場」、「もの」と「もの」が相互に依存し合う「連関性」 や「差異」、「複雑性」を 表わす事で、その「もの」ならではの存在性を最大限に引き出しており、見たことのない新しい景色、状況を鑑賞者に提示してきた。

本展では、淡い色合いが特徴的な作品を展示する。色は菅にとって「ものの意味を消すこと」であり、また「色はものと対等なもの」だという。ところどころ色によって木がもつ意味合いを消して別の存在性を示すことで、現実にあることとつながりながら決して混じり合わない世界のあり方を認識させる。

菅木志雄 「あるというものはなく、ないというものもない
会期:4月27日(土)~ 6月8日(土)
会場:小山登美夫ギャラリー六本木(東京都港区六本木6-5-24 complex665 2F)
時間:11:00 ~19:00
休館日:日月祝


4. 「石岡瑛子 I デザイン」(茨城県近代美術館)

「西洋は東洋を着こなせるか」PARCO ポスター (1979)

表現者、石岡瑛子の仕事と生涯を約500点で辿る

1938年生まれの石岡瑛子はデザイナー、アートディレクターとして人々に新しい価値観を提示し、広告、舞台、映画など多岐に渡る分野で国際的に活躍した。本展では没後10年を経て国内外から改めて注目が集まる石岡の、キャリア初期における資生堂やセンセーションを巻き起こしたPARCOの代表作をはじめ、東京を拠点にしていた1960年代から80年代の仕事を中心に、 アートディレクターとして采配を振るったポスターやCM、グラフィックアートからスケッチまで、約500点を一挙に公開。常に革新的なヴィジュアルを目指した石岡のデザイン哲学と、彼女が表現者として生涯にわたって鍛錬し続け、そして他者とのオープンな協働を通して培った力を浮き彫りにする。

展示の中には、完璧主義だった石岡の情熱と執念が残るスケッチやメモ、校正紙がある。細かく厳しい指示に恐れおののく人、あるいは熱意と説得力に満ちた書き込みに感動する人が続出するという直筆の朱字が入った校正紙は、石岡が完成に向けてどのようなヴィジョンを抱き、いかに表現を磨き上げていったのか彼女の体温や生の感情を感じ取るとともに、制作のプロセスの一端をうかがい知ることができる。

また、長きにわたってコラボレーションをし、その創造力や人生について検証を重ねたレニ・リーフェンシュタールについてのプロジェクトを、インタビュー、展覧会の構成・演出等の資料、印刷物のデザイン、関連書籍などとともに紹介する。

「石岡瑛子 I デザイン」
会期:4月27日(土)〜7月7日(日)
会場:茨城県近代美術館(茨城県水戸市千波町東久保666-1)
時間:9:30 ~17:00 (入場は30分前まで)
休館日:月曜


5. 「MIRANDA JULY: F.A.M.I.L.Y.」(プラダ 青山店)

展示風景

マルチに活躍するミランダ・ジュライの遊び心溢れる東京初個展

映画監督、ミュージシャン、小説家などさまざまな顔を持つ1974年アメリカ生まれのアーティスト、ミランダ・ジュライ。彼女の東京初個展となる本展は、イタリア・ミラノのプラダ財団「Osservatorio」で開催中の「Miranda July: New Society」と同時開催されている。

本展では、最新作「F.A.M.I.L.Y. (Falling Apart Meanwhile I Love You)」を披露する。インスタグラムを通じた見知らぬ7人との1年間にわたるコラボレーションに基づいたマルチチャンネルビデオインスタレーションで、作品制作の参加者はジュライからの一連のプロンプトに対してビデオ応答を送信、ジュライはそれをソーシャル メディアコンテンツ用に設計された無料の編集アプリの切り取りツールを使って作品化した。

この作品について、ジュライは「私にとってインスタグラムが叶えることの1つである、愛情をこめて見つめられるだけで大丈夫だと思えるということを、手作業で実現しようとしている」と話す。これに対し、東京とミラノ両展のキュレーションを務めたミア・ロックスは「これがジュライが好む活動方法。彼女は交流を開始するとある程度コントロールするが、その交流の中で他人の欲望や行動も歓迎する。彼女は遊び心のある方法で力とコントロールを共有することを実験している」と解説する。

「MIRANDA JULY: F.A.M.I.L.Y.」
会期:5月9日(木)〜 8月26日(月)
会場:プラダ 青山店 6F(港区南青山5-2-6)
時間:11:00 ~ 20:00
休館日:不定休

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