ARTnewsJAPAN

略奪美術品に対する非難? MSCHFがメトロポリタン美術館から「盗んだ」部品で新作を発表

世界中の美術館が収蔵している作品が正しい経路で入手されているか否かを調査する動きが活発化している。こうしたなか、アートコレクティブのMSCHFメトロポリタン美術館のトイレに付いていた蛇口や配管を勝手に交換して制作した新たなインスタレーションが、ペロタン・ギャラリーで展示されている。

MSCHFがペロタン・ギャラリーで開催している「Art 2」の展示風景。 Photo: Guillaume Ziccarelli/Courtesy of MSCHF and Perrotin

ニューヨークメトロポリタン美術館内にあるトイレのシンクに備え付けられた取っ手や給水管をはじめとするすべての部品が、アート集団MSCHFによって取り替えられた。この風変わりなパフォーマンスは、世界中の美術館に収蔵されている不正に入手された作品の返還をめぐって、美術館に厳しい目が向けられているなかで行われたものだ。

MSCHFが投稿したInstagramの動画には、施設からシンクの部品を盗み出し、新品に取り替える計画を議論する様子が収められている

《Met's Sink of Theseus》(2024)と題されたこの作品は、「テセウスの船」あるいは「テセウスのパラドックス」として知られる古代の思考実験を参照したもの。シンクの部品をすべて交換することで別物に変わってしまうのか、それとも元ののシンクの本質が残るかを考察しているという。

ロサンゼルスのペロタン・ギャラリーで4月6日から開催されている展覧会「Art 2」では、メトロポリタン美術館から盗んだ部品が洗面ボウルに組み直されたシンクが展示されている。つまり、メトロポリタン美術館のトイレに設置されていた磁器製のシンクは盗んでいないのだ。

MSCHFによる今回のパフォーマンスを見ると、メトロポリタン美術館といった百科事典的な大機関がどんなふうに美術品を入手してきたのか、疑義を抱いてしまう。また、男性用の小便器を横に倒し、「R.Mutt」とサインされたデュシャンのレデメイド《噴水》(1917)のように、配管やシンク、トイレをインスタレーションにするという伝統的な手法も想起させる。

MSCHFは過去にもネットを騒がす作品を発表しており、ATMを使おうとすると、利用者の銀行口座の残高が公開されるように改造した《ATM Leaderboard》(2022)はその代表例だ。このインスタレーションは、ペロタン・ギャラリーがアート・バーゼル・マイアミで発表している。また、リル・ナズ・Xとコラボレーションを行い発表したナイキのスニーカー《サタン・シューズ》には、MSCHFのデザインスタッフの血液が1滴入っていたり、キリストが洗礼を受けたと言われるヨルダン川の聖水を入れたエアマックス97を発表したりと、物議を醸すスニーカーを制作したことでも話題になっている。(翻訳:編集部)

from ARTnews

あわせて読みたい