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マーク・ロスコ最後の作品「ロスコ・チャペル」の拡張工事がスタート。瞑想ガーデンや宿泊施設を備える「対話と内省」の場に

アメリカ・テキサス州にあるロスコ・チャペルは抽象表現主義のマーク・ロスコ最後の作品であり、2021年にはBTSのRMが訪れて話題にもなった。4月17日、同チャペルで4200万ドル(約65億円)をかけた拡張工事のプログラムが着工したことが発表された。

ロスコ・チャペルと拡張工事が続く敷地内の航空写真。Photo: Courtesy Architecture Reserch Office

アメリカ・テキサス州ヒューストンにあるロスコ・チャペルは、1964年にコレクターのジョン・ド・メニルとドミニク・ド・メニルがマーク・ロスコに依頼して完成した建物だ。しかし、14の巨大壁画の設置を含めた建設作業は難航し、7年後の1971年2月26日にようやく完成したが、ロスコはその1年前にマンハッタンのアトリエで自殺しており、完成を見届けることは出来なかった。

ロスコの最後の作品でもあるチャペルは、特定の宗教・宗派を持たず、全ての「祈る人」のために作られた。高い天井からは自然光が射しこみ、全面にロスコが描いた壁画が掲げられている八角形の空間は、礼拝堂であると同時に瞑想のための場所でもある。50年以上経った今でも、ロスコのビジョンはアートファンを強く惹きつけており、チャペルのウェブサイトによれば、毎年10万人以上が訪れているという。

4月17日に着工したロスコ・チャペルの改修工事は、2021年に完了した3000万ドル(約46億円)をかけた工事に続く第2弾だ。拡張された敷地に、2026年までに管理・アーカイブ棟、新しいプログラム・センター、講演者やフェローなどゲストを受け入れるためのバンガロー、イベント用の広場、そしてロスコ・チャペルのプロジェクトに関わっているとされるキャスリーンとチャック・マレンウェグ夫妻の名を冠した瞑想ガーデンが建設される予定だ。

デヴィッド・レスリー専務理事は声明の中で、「これまでチャペルには、私たちの2つの使命を果たすために必要なスペースがなかったのです」と述べ、こう続けた。

「今回のプロジェクトは、より多くの来館者を迎えることができるスペースを作るということだけでなく、より豊かな芸術体験、より深い瞑想、そして創立者のビジョンでもある社会正義を実現するためのコミュニティとの連帯を促進するもの。それは、私たちを隔てる多くの境界を越えて、対話と内省の中で人々をひとつにするものなのです」(翻訳:編集部)

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