ヴェネチア市が観光客から「入場料」の徴収開始。抜き打ち検査で最高3万円の罰金も
ヴェネチア・ビエンナーレ開幕から約1週間後の4月25日、日帰り観光客から5ユーロ(約830円)を徴収する制度がヴェネチア市で試験的に始まった。オーバーツーリズム(観光公害)が問題になっている同市への訪問客抑制を目的としている。
ビエンナーレのオープニングに数千人にのぼるアート界のVIP、ジャーナリスト、キュレーターなどが集まったヴェネチアで、日帰り観光客への入市料が試験的に開始された。これは世界の主要都市でも前例がない試みだが、同市のルイジ・ブルニャーロ市長は、この制度によってヴェネチアが「住みやすい」街に戻るとしている。
その一方で効果を疑問視する向きや、逆に評判を落とすことになるという声もある。市民団体のヴェネシア・ドット・コム(Venessia.com)でリーダーを務めるマテオ・セッキは、英ガーディアン紙の取材にこう語った。
「都市に入場料を課すなどありえません。これは街をテーマパークに変えてしまうようなもので、ヴェネチアにとって悪いイメージになります。冗談じゃない!という気持ちです」
旧市街中心部に入る観光客の入市料は、まず4月25日から7月14日までの週末を中心とした指定日に適用され(合計29日)、事前にオンライン登録・支払いを行ってQRコードを取得することが必要となる。
特別なゲートは設けられていないが、サンタルチア駅を含む市内の主要部5カ所で抜き打ち検査が行われ、登録していない場合は50〜300ユーロ(約8300〜5万円)の罰金が科される。住民や宿泊者、学生、14歳以下の子どもは徴収免除の対象となるが、宿泊者も登録は必要になる。
ヴェネチア市によると、イタリアの祝日だった4月25日には5500人ほどが入市料を支払った。ブルニャーロ市長は、この制度の目的は金銭的なものではないとしているが、同市は初日だけで2万7000ユーロ(約450万円)を超える収入を得たことになる。市長はまた、入市料導入が成功すれば、住民への減税を考えるという。
4月20日に始まった第60回ヴェネチア・ビエンナーレは、サンパウロ美術館のブラジル人アーティスティックディレクター、アドリアーノ・ペドロサが芸術監督を務め、11月24日まで開催される。そのメイン展示のタイトルは、奇しくも「Foreigners Everywhere(どこにでもいる外国人)」だ。
なお、2022年に行われた前回のビエンナーレでは、コロナ禍による渡航制限にもかかわらず、過去最高となる88万人が来場した。(翻訳:石井佳子)
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