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文化施設の自由を守れ! 保守派によるパレ・ド・トーキョー後援打ち切りにアーティストらが反発

パレ・ド・トーキョーで15年に渡り支援を続けたパトロンが、同館がパレスチナの歴史を扱った展覧会を開催したとして支援を打ち切った。それを受けて、200人近いアーティスト、キュレーター、批評家たちが、同館を支持する公開書簡を発表した。

パレ・ド・トーキョー。Photo: Herve Champollion/Gamma-Rapho Via Getty Images

公開書簡が発表されたきっかけは、アート・コレクターで、15年に渡って同館のパトロン・グループ「アミ・デュ・パレ・ド・トーキョー」に所属するサンドラ・ヘゲデュースが、パレ・ド・トーキョーで現在開催中の、パレスチナ解放のための戦いの歴史に焦点を当てた展覧会を受けて同グループを辞職した件だった。ヘゲデュースは同展について、「この紛争の歴史について、偏った見方や嘘を何の視点もなく提示している」とし、同館が 「ウォーキズム(*1)、反資本主義、親パレスチナなどを支持している」と自身のインスタグラムで非難した。


*1 不平等、差別などの社会正義に関わる問題に高い意識を持ち、その解決に取り組もうとする姿勢

この件について、「アミ・デュ・パレ・ド・トーキョー」代表のフィリップ・ディアンは、美術館のパトロンの仕事は 「展覧会のプログラムについて判断を下すことではない 」とコメントし、パレ・ド・トーキョーのギョーム・デザンジュ館長は、この美術館の使命は、「現在社会で起こっている出来事に光を当て、疑問を投げかけ、歴史的な観点から考察すること」だと語った。

一方、地元の保守派メディアもこの状況を報じており、右派のCauseurは、ヘゲデュースの言葉を取り上げて、パレ・ド・トーキョーが展覧会で「プロパガンダ」を広めていると非難した。

公開書簡は、5月13日にル・モンド紙に掲載され、フランスの現代美術館のネットワークであるDCAでも公開された。書簡は、この出来事はフランスの「組織の自由」に対する潜在的な脅威であるとした上で、「文化施設も芸術やアーティストと同様に自由であり続けなければならない。アーティストに、使命の核心である思想の対立の場を提供するために、文化施設はプロフェッショナリズムと安心感を持った運営が必要だ」と主張する。

書簡の署名者には、エリック・ボードレール、カミーユ・アンロ、トーマス・ヒルシュホルン、ピエール・ユイグといったアーティストのほか、パレ・ド・トーキョーの前ディレクター、エマ・ラヴィーニュ、リヨン・ビエンナーレのキュレーター、アレクシア・ファーブルや、アート・ディーラーのジョセリン・ウォルフの名が並ぶ。

2023年にも、パレ・ド・トーキョーは大きな論争に巻き込まれている。同館で展示した、ミリアム・カーンがウクライナ侵攻の暴力を題材に制作した絵画について、右派の政治家やマスコミは「小児性愛を助長している」と主張し、裁判にまで発展。フランスの裁判所は、この絵画は子どもたちに害を与えるものではないという判決を下し、展示が続けられた。公開書簡にも、パレ・ド・トーキョーが 「標的にされた 」もうひとつの例として、カーンの件が言及されている。(翻訳:編集部)

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