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  • 2024.08.05

マックスマーラ共催のアートアワード受賞者、ドミニク・ホワイトが構想する「アフリカの未来」

マックスマーラとホワイトチャペル・ギャラリーが共催するアートアワード「マックスマーラ・アート・プライズ・フォー・ウィメン」の受賞者であるドミニク・ホワイトが、新作《Deadweight》をホワイトチャペル・ギャラリーで発表した。本アワードを受賞後にイタリア国内で半年ほど滞在する権利が授与されたホワイトの彫刻作品は、彼女がもつ黒人のための新世界の創造に対する関心を描いている。

第9回「マックスマーラ・アート・プライズ・フォー・ウィメン」を受賞したドミニク・ホワイト。Photo: Above Ground Studio (Matt Greenwood)

イギリスで活動する女性アーティストを対象とした唯一のビジュアルアート・アワードである「マックスマーラ・アート・プライズ・フォー・ウィメン」の第9回受賞者、ドミニク・ホワイトの新作《Deadweight》がイギリスのホワイトチャペル・ギャラリーにて公開中だ(9月15日まで)。

「マックスマーラ・アート・プライズ・フォー・ウィメン」は、ホワイトチャペル・ギャラリーの館長を務めていたイヴォナ・ブランズウィックの発案で2005年に創設された、マックスマーラ・ファッション・グループが共催する隔年開催のアート・アワードだ。2007年からは、マックスマーラが所有する現代美術館コレツィオーネ・マラモッティが共催として参画し、過去に大規模の個展を開催した経験のない作家の認知度向上や野心的な新作の制作の支援など、キャリア面と創作面に及んでサポートを提供している。対象となるのは、イギリスを拠点に活動する、ジェンダーアイデンティティが女性のアーティスト。作品案を提出し、受賞したアーティストは、イタリア国内に半年ほど滞在して作品制作を行う。

第9回の受賞者となったドミニク・ホワイトホワイトも同様に、イタリアのミラノやジェノヴァ、アニョーネといった街を巡り、《Deadweight》を完成させた。4点の大規模な彫刻で構成されている本作は、海のもつ隠喩性と再生力に対してホワイトが感じる魅力、そして黒人のための新世界の創造に対する関心を表現している。

ドミニク・ホワイト《ineligible for Death》Photo: Above Ground Studio (Matt Greenwood)

載貨重量を意味する「deadweight」という言葉は、船が安定して浮かんで機能する能力を判定する、船の全積載量を表す海事用語。ホワイトはこの言葉を意図的に逆転させ、安定ではなく混乱をもたらし、船が転覆するポイントを考慮し、黒人が本当の意味で解放される可能性を提示したという。

半年のレジデンシー期間においてホワイトは、訪れた街で海軍・海事史や地中海の奴隷貿易の学者や研究者の協力を仰ぎ、鋳物工場や職人の工房を訪ね、伝統的および現代的な金属加工技法の専門家から新しい技能を学んだという。

新たに会得した技法とホワイトがかねてから研究していたアフロフューチャリズム、アフロペシミズム、そして海上統治の概念を紡ぎ合わせて作られた《Deadweight》は、資本主義と植民地支配の影響力から解放された、流動的で反抗的な現実を突きつける可能性を秘めた海の領域という、伝統的なユートピアSFの外にあるアフリカの未来を構想している。それと同時に、「まだ実現していないが実現しなければならない黒人の未来」である、海に囲まれた想像上の国籍のない世界を想起させる。

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