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最新の分析調査で「本人作ではない」と判明。フリードリヒの画風とは「似ても似つかない」下絵を発見

ドイツ・ロマン派を代表する風景画家、カスパー・ダーヴィト・フリードリヒのものとされていた作品が、詳細な分析調査の結果「作者不明」に変更された。

カスパー・ダーヴィド・フリードリヒ《Der Wanderer über dem Nebelmeer(霧の海を見下ろす旅人)》(1818年) Photo: Elke Walford/©SHK, bpk, and Hamburg Art Gallery

カスパー・ダーヴィト・フリードリヒは19世紀のドイツ・ロマン派に属する風景画家で、同世代の中で最も重要な作家の1人。切り立った岩の上に立つ男性の後ろ姿が印象的な《Der Wanderer über dem Nebelmeer(霧の海を見下ろす旅人)》(1818)のように、荒涼とした大地の中に後ろ向きの人物が佇む寓意的で静寂感にあふれた風景画が特徴とされる。

フリードリヒの生誕250周年にあたる今年、ドレスデン美術館の専門家たちは、記念展の開催に先立って同美術館所蔵のフリードリヒ作品を改めて調査した。そこで問題となったのが、初期に描かれた《Landschaft mit kahlem Baum(裸木のある風景)》(1789/1799)だ。

結果として同作品はフリードリヒ・コレクションから外され、現在開催中の記念展「Caspar David Friedrich: Where it all began(カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ:全てはここから始まった」(2025年1月5日まで)では、同館所蔵のフリードリヒ作品13点とともに、「作者不明」として展示されている。

同館のキュレーター、ホルガー・バークホルツはモノポール誌の取材に対し、赤外線調査と顔料分析で「フリードリヒの画風とは似ても似つかない」下絵が発見され、顔料には1810年まで一般的ではなかった黄色や青色も含まれていたと説明。また、この絵がフリードリヒ・コレクションから外されたのは「様式的に合わない」からで、ロマン派絵画の専門家もこの結果に同意しているという。

フリードリヒの初期作品は長い間、評価が難しいと考えられてきた。資料によると、フリードリヒが本格的に制作を始めたのは1807年だが、その時代に彼が描いたとされる絵画は数多い。そのことについてバークホルツはこう語った。

「『フリードリヒに見えないのは初期の作品だからだ』という論法がずっとまかり通っていたのですが、それは危険な判断だといつも思っていました」(翻訳:石井佳子)

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