アジア系アメリカ人の困難な歴史に光が当たる。バイデン大統領が博物館の設立検討委員会法案に署名
6月13日、バイデン大統領は、アジア・太平洋諸国系米国人(AAPI)の歴史や文化を紹介する博物館創設の是非を検討する委員会の設置法案に署名。同法案が成立した。
この委員会を構成するのは、議会から任命されたAAPI史の専門家や博物館管理職員で、新しい博物館の資金調達や管理方法などの検討を行う。博物館設立が実現すれば、ワシントンD.C.にある国立スミソニアン博物館のネットワークに組み込まれることになる。
この法案の正式名称は「国立アジア太平洋米国歴史文化博物館創設検討委員会法案」といい、民主党のグレース・メン下院議員(ニューヨーク州選出)が2021年に提出したもの。メン議員は、2021年12月に行われた小委員会の公聴会で、AAPIの人々が「インフラ、経済、軍務などに多大な貢献」をしてきたにもかかわらず、しばしば歴史から排除されたり、忘れ去られたりしていると述べている。
ホワイトハウスで行われた署名式典で、バイデン大統領は、博物館の設立計画は「長年の懸案だった」とし、賛辞を送った。法案提出に加わった議員の中には、今はアジア系米国人が直面している不公正を解決するべき重要な時期であり、この法案はそれにふさわしい動きだと指摘する声もある。
バイデン大統領はまた、次のように述べている。「規模も影響力も大きい博物館の設立は、人々に刺激を与え、教育に役立つだろう。そして何より、ようやく自分自身が米国の一部だと考えられるようになる人もいる」。さらに、今回の法案成立が、アジア系女性6人を含む8人が死亡したアトランタ連続銃撃事件から1年、第2次世界大戦中に日系人12万人が米国内で強制収容されてから80年目の節目に当たることにも触れている。
署名後の記者会見で、南アジア系として初めて行政府の役職に就いたカマラ・ハリス副大統領は、この博物館の狙いについて、アジア系アメリカ人が強いられてきた困難な歴史を認識することにあると述べた。1882年の中国人排斥法成立、日系人の強制収容、9.11以降の南アジア系アメリカ人に対する差別といった米国史上の出来事を取り上げる予定だという。
米国の議員たちの間では、アジア系アメリカ人の歴史に光を当てる取り組みが活発化している。博物館設立検討委員会法案もその一環だ。そんな中、ニュージャージー州とイリノイ州では、公立学校でアジア系アメリカ人の歴史を教えることを義務付ける州法が先ごろ可決された。
近年、米国ではアジア系アメリカ人に対する暴力事件が急増。ある調査によれば、その数はコロナ禍が始まって以来11倍にも跳ね上がっているという。
なお、国立博物館の建設には、また別の法案を議会で可決する必要がある。これまでの事例としては、国立アフリカ系アメリカ人歴史博物館の建設計画が米議会で承認されたのは2003年。同博物館がようやく一般公開されたのは、それから10年以上経った2016年のことだった。(翻訳:清水玲奈)
※本記事は、米国版ARTnewsに2022年6月14日に掲載されました。元記事はこちら。