活動家がサグラダ・ファミリアに塗料を噴射。気候危機に対する政府の対応を糾弾
スペインの環境活動団体「フツロ・ベヘタル」の活動家2人が、バルセロナのサグラダ・ファミリア聖堂に赤と黒の粉末塗料を吹き付けた。抗議した活動家たちは逮捕後、罰金を支払い釈放された。

8月31日、バルセロナのサグラダ・ファミリア聖堂の柱に、環境活動家が「気候正義を」と叫びながら赤と黒の粉末塗料を吹き付けた。抗議行動を実施したのは、スペインの環境活動団体「フツロ・ベヘタル(植物の未来)」。同団体は、この夏に発生した記録的な山火事に対するスペイン政府の対応が不十分だったと訴えている。
SNSに投稿された動画では、フツロ・ベヘタルに所属する2人の活動家が塗料を吹きかけた後に警備員に拘束される様子が映っている。いずれの活動家も逮捕されたが、600ユーロ(約10万円)の罰金を支払ったのちに釈放された。今回の抗議活動について、フツロ・ベヘタルは次のような声明を発表した。
「今回の抗議を通じて私たちは、気候危機に対するスペイン政府の行動不足を糾弾すると同時に、この夏にイベリア半島、およびヨーロッパの大部分を荒廃させた火災の原因である気候変動の深刻な影響を訴えている」
フツロ・ベヘタルはこれまでも文化施設で抗議活動を実施してきた。例えば、2022年にはマドリードのプラド美術館で、ゴヤの名画2点に活動家が自らの手を接着し、同館の壁に「1.5℃」と書く抗議を行っている。抗議活動の実施と同時に投稿された動画の中でフツロ・ベヘタルは、国連が、平均気温上昇を1.5度に抑えるパリ協定の目標は達成不可能と認めたことを指摘していた。
文化施設を標的とした抗議活動のほかにも、同団体は、大型ヨットやプライベートジェット機の破壊、空港の滑走路の封鎖といった過激な活動を行っている。これに対してスペインの捜査当局は、同団体を「犯罪組織」であると非難し、組織的な抗議活動によって約50万ユーロ(約8640万円)の損害を与えたと主張。昨年12月には、メンバー22人の身柄が拘束されている。
現在も続いているスペインの山火事は、同国の国家気象庁が「観測史上で最も厳しい」熱波だったと評する16日間の猛暑によって発生したものだ。植生が乾燥したことで始まった山火事は、40万ヘクタールを焼き尽くし、4人の死者が出たほか、大勢の人々が避難生活を強いられている。山火事の鎮圧は喫緊の課題となっているものの、同国首相のペドロ・サンチェスは、スペインでは十分な気候変動対策が講じられていなかったと発表した。サンチェス首相の声明によれば、過去5年間で気候変動によって2万人以上が死亡し、インフラや農作物への被害で320億ユーロ(約5兆5310億円)の損失が発生したという。
気候変動対策をこれ以上先延ばしにしてしまうと生活への危険が及び、さらなる損害が出ることから、首相は10の気候変動対策を発表した。この計画のなかには、危機対応を統括する国家市民保護機関の設立や、避難所ネットワークの構築、森林管理や土地管理の見直しなどが含まれる。サンチェス首相の声明はこう続く。
「気候変動に立ち向かうには、社会的な団結が不可欠です。連日の熱波や山火事といった悲劇を防ぐためには、直ちに行動しなければなりません。火災で灰色になったスペイン、洪水でよどんだスペインを子どもたちに残したくなければ、緑豊かな国になる必要があるのです」
サンチェス首相はまた、気候危機の解決には農業も重要な役割を果たすと語り、持続可能な農場運営、適切な放牧、効率的な灌漑を実施する重要性を説明した。この計画は現在閣議で検討されており、承認後は公開協議に付される予定だ。