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今度はモネの絵にマッシュポテト!。ドイツで環境活動家の抗議行動

10月23日、ドイツで環境活動家がクロード・モネの絵にマッシュポテトを投げつけ、作品が汚される事件が起きた。14日にロンドンで起きた同様の事件に続く、気候変動と環境破壊への注意喚起を意図した抗議行動だ。

マッシュポテトを投げつけたモネの絵の前で抗議を行うレッツェ・ゼネラチオンの活動家 Courtesy Letzte Generation

被害に遭った作品はモネの《積みわら》(1890)で、ARTnewsトップ200コレクターの1人、ハッソ・プラットナーが2019年のオークションで落札したものだ。落札額は1億1070万ドル(当時の為替レートで約121億円)。プラットナーのコレクション作品を頻繁に展示しているポツダムのバルベリーニ美術館に、17年の開館以来貸し出されていた。

マッシュポテトを投げつけて抗議を行ったのは、ドイツの環境活動団体レッツェ・ゼネラチオン(Letzte Generation、ドイツ語で「最後の世代」の意味)だ。同団体は声明を出し、「絵は損傷を受けていない。洪水や嵐、干ばつが、差し迫った大災害の前兆として今日の世界に甚大な被害をもたらしているのとはまったく対照的だ」と述べている。

一方、バルベリーニ美術館はソーシャルメディアに投稿した声明で、この絵は「グレーズされている(透明な絵の具を塗ること)」ため、《積みわら》にダメージはないとしている。同美術館は、26日には作品を再び展示する予定だ。

レッツェ・ゼネラチオンはメディアに対するコメントで、今回の抗議はモネが描いた牧歌的な自然と、現在の状況の対比を強調するものだと主張。同団体の広報担当エイミー・ファン・バーレンは、「モネは自然を愛し、その唯一無二の壊れやすい美しさを作品に収めた。モネがその美しさを称賛した我われの世界そのものの破壊よりも、現実の絵画1枚を損なうことを恐れる人が、なぜこれほど多いのか?」という声明を出している。

抗議行動の映像には、2人の活動家がマッシュポテトの入った容器を手に取って絵画に投げつけ、作品の下の壁に手を接着した様子が捉えられている。ポテトは絵の表面をつたって、額縁の下部にも垂れかかっている。

ここ数カ月、美術館ではこの種の抗議活動が続いている。今回の一件も明らかに、今月中旬ロンドン・ナショナル・ギャラリーでトマトスープをゴッホの《ひまわり》に投げつけた環境活動団体、ジャスト・ストップ・オイルの行動を思わせるものだ。

ジャスト・ストップ・オイルは、これまでにもグラスゴーのケルビングローブ美術館やマンチェスター美術館、ロンドンのロイヤル・アカデミー・オブ・アーツなどで、名画の額縁に自分たちの手を貼り付ける抗議を行ってきた。これに刺激され、イタリア、オーストラリアなどでも同様の抗議行動が起きている。

レッツェ・ゼネラチオンも、これまでベルリンやドレスデンの美術館で、ルーカス・クラーナハやラファエロの絵画を対象に直接行動を起こしてきた。美術専門家の反応が鈍い国が多い中で、ドイツ当局はこの行動を批判し、ドイツ文化評議会は「貴重な美術品を危険にさらすような抗議活動はやめてほしい」とする公開書簡を出している。

しかし、これまで最も大きな批判を浴びたのは、ジャスト・ストップ・オイルがロンドン・ナショナル・ギャラリーで行った抗議だ。評論家や政治家などは、こうした行動が有害な影響を及ぼす可能性を認識していないとして同団体への怒りをあらわにしている。

ナショナル・ギャラリーでは、若い活動家2人がファン・ゴッホの作品にトマトスープを投げつけて手を壁に貼り付け、気候変動の影響を抑えるために迅速な行動を取るよう英国政府に働きかけることが目的だと主張。絵に破損はなかったが、怒りや恐怖の声が巻き起こった。

レッツェ・ゼネラチオンのメンバー、ミリアム・ハーマンは、ジャスト・ストップ・オイルへの非難に対し、こう反発している。「気候は破滅的状況にあり、飢えている人、凍えている人、死んでいく人がいる。それなのに、あなたたちが恐れているのは、絵にかけられたトマトスープやマッシュポテト。私が何を恐れているか分かるのか?」(翻訳:石井桂子)

 *US版ARTnewsの元記事はこちら

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