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2024年ヴェネチア・ビエンナーレのカナダ代表アーティストは、権力の非対称性に目を向けるカプワニ・キワンガに決定

2024年4月に開催されるヴェネチア・ビエンナーレの国別パビリオンのカナダ館代表アーティストに、国際的に活躍するアーティスト、カプワニ・キワンガが選ばれた。2022年同国パビリオン代表アーティストに選出された、スタン・ダグラスに次いで2人目の黒人アーティストであり、黒人女性としては初となる。

カプワニ・キワンガ(2016年撮影)。Phooto: ©Bertille Chéret

カナダに生まれ、現在はパリを拠点に活動するキワンガは、強制的に疎外され、忘れられ、消された人々の歴史に目を向けているアーティストだ。大西洋の奴隷貿易、人種隔離政策時代に、黒人が安全に利用できるレストランなどの施設を記した『グリーンブック』や、アフリカ諸国との様々な外交会議の時に設置されるフラワーアレンジメントなどについてのリサーチをもとに、彫刻、インスタレーション、写真、ビデオ、パフォーマンスなど、様々なメディアを用いた作品を制作している。

キワンガは、2018年にSobey Art Award(カナダ人アーティスト対象)、2020年にPrix Marcel Duchamp(フランス人部門)、2022に年Zurich Art Prize(Museum Haus Konstruktivでの展覧会開催)など、世界トップレベルの美術賞を多数受賞している。そして、個展をニューヨークのNew Museum、ロッテルダムのKunstinstituut Melly(旧Witte de With)、ミュンヘンのHaus der Kunst、トロントのPower Plant、South London Gallery、パリのJeu de Paumeで開催しており、昨年は、ヴェネチア・ビエンナーレの本展にも出品している。

カナダ国立美術館がコミッショナーを務めるカナダ館のキュレーションは、オハイオ州コロンバスのウェクスナー芸術センターのエグゼクティブディレクター、ガエタン・ヴェルナ(前職は発電所のディレクター)が担当する。

ヴェルナはキワンガについて、声明で次のように述べている。「彼女は世界中のアーカイブを掘り下げ、綿密なリサーチを行い、それらを作品に優雅に織り込みます。キワンガは、私たちが共有する歴史の一部である、黙殺され、疎外された社会政治的な物語を明らかにし、それに向き合うための触媒となるアートの役割に興味を持っています」

また、カナダ館選考委員会の議長を務めたMichelle LaValleeとJonathan Shaughnessyは、彼女をこう評価する。「現在の権力の非対称性の根底にある構造や、物語に対して目を見張るような調査を重ねて生まれる作品は、国際的に注目されています。彫刻、ミクストメディア・インスタレーション、パフォーマンスと幅広く活動するキワンガにとって、空間すらも芸術です。展示される場所にも細心の注意を払う必要があるでしょう」

イギリス館のジョン・アコムフラ、スイス館のゲレイロ・ド・ディヴィーノ・アモール、フランス館のジュリアン・クルーゼ、エストニア館のエディス・カールソンなど、各国がパビリオンの代表アーティストを発表し始めている。ビエンナーレのメイン展示のキュレーターは、アドリアーノ・ペドロサ務めることが決まっている。(翻訳:編集部)

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