下着丸見えのマリリン・モンロー像をめぐり訴訟勃発。「ノスタルジーを装った女性蔑視」
約8メートルのマリリン・モンロー像がカリフォルニア州パームスプリングス美術館の隣接地に設置されたのは2022年。地元住民らはこの像の撤去を求め、2度目の訴訟を起こした。
《Forever Marilyn》と名付けられたこの作品は、アメリカの彫刻家、故スワード・ジョンソンが制作したもので、モンローの1955年の主演映画『七年目の浮気』のアイコニックなシーンがモチーフになっている。ニューヨークの地下鉄の排気口から噴き出される風によって白いドレスがめくれ上がった、あのマリリン・モンロー像だ。しかし設置以来、アングルによってめくれ上がったドレスからモンローの下着が見えるため、地元住民たちは「挑発的」であるとしてこの像の撤去を求めてきた。
パームスプリングス美術館のエグゼクティブディレクター、ルイス・グラコスも設置に反対していた一人だ。2020年の市議会でグラゴスはこう語っている。
「美術館から出てきて最初に目に入るのが、背中と下着が丸見えのマリリン・モンローというのはどうなのか。女性を“性の対象”として見ることを促すような像を展示することが、若者や訪問者、地域社会によい影響を与えるとは思えません」
この作品をめぐっては、2021年に「ノスタルジーを装った女性蔑視」「独創性やセンスが欠けている」「悪趣味」「美術館が象徴するものとは正反対」という声が上がり、抗議デモが行われた。その後、ファッションデザイナーのトリナ・タークやモダニズムデザインのコレクター、クリス・メンラッドも参加する活動家グループ、CReMa(マリリン像移転委員会)がパームスプリングス市に対して撤去を求める訴訟を起こし、一度は棄却されたが、今月になってカリフォルニア州第4地区高等裁判所が審議を再開した。
今回の訴訟の焦点となっているのは、パームスプリングス市がどれほどの期間、像を設置した通りを閉鎖する権利を有するか。同市は3年間、巨大なマリリン像を設置するために付近の通行を禁止してきた。カリフォルニア州の法律によると、市は「一時的」なイベントのために公道の交通を遮断する権利を持っているが、今回はそれに該当しないというのがCReMaの主張だ。
同裁判所もこれに同意し、判決文で「法律は、祝日のパレード、フェア、パーティーなどで数時間、数日、あるいは数週間、一時的に道路の一部を閉鎖することを認めるものである。しかし、これらの法律は、公道を何年も閉鎖し、その間に銅像や半永久的な芸術作品を設置するような広範な権限を持ってはいない」と述べている。
この彫刻の移動先については、すでにいくつものアイデアが出ている。現在、Change.orgで行われている「パームスプリングスの女性差別主義の象徴#MeTooMarilyn像を止めろ」という署名運動には4万1953人が賛同しているが、そのうちの一人であるロサンゼルス在住のアーティスト、Nathan Couttsは、こう語る。
「どうしても展示したいなら、同州カバゾンにある巨大なコンクリートの恐竜が沢山ある観光地に移動させればいいのではないか。平凡な道端のアトラクションとして認識してもらえるかもしれない」
この彫刻は、パームスプリングス市への観光客増加を狙い、市が出資している機関、PS Resortsが2020年に購入したもの。アート・ニュースペーパーによると、2021年に市議会の全会一致で、この像が美術館付近に設置されることが決定したという。(翻訳:編集部)
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