ディオールとジョアンナ・ヴァスコンセロスが二度目のコラボ! 巨大インスタレーションで戦う女性たちを賛美
2月28日に行われたディオールの2023-24年秋冬コレクションのランウェイに現れたのは、没入型の巨大インスタレーション。手掛けたのは、ポルトガル人アーティスト、ジョアンナ・ヴァスコンセロスだ。
今シーズンのディオールが注目したのは、1950年代、独立自尊の精神で自らを導き、固定観念を覆す生き方を実践した3人の女性たち──クリスチャン・ディオールの妹であるカトリーヌ・ディオール、フランスの歌手エディット・ピアフ、ジュリエット・グレコ──だ。そんなコレクションの発表のパートナーとしてクリエイティブディレクターのマリア・グラッツィア・キウリが白羽の矢を立てたのは、ポルトガル人アーティスト、ジョアンナ・ヴァスコンセロス。ヴァスコンセロスは2005年のヴェネチア・ビエンナーレでの作品展示で注目を集め、2018年にはビルバオ・グッゲンハイム美術館で個展を開催するなど、国際的に高い評価を得るアーティストだ。
今回のコラボレーションに際してキウリは、第2次大戦中はレジスタンスの一員として戦い、人生の大半を花屋という職業に捧げた強く自立した女性、カトリーヌ・ディオールをモチーフにするようヴァスコンセロスに依頼したという。
ヴァスコンセロスはカトリーヌを、北欧神話で主神オーディンに仕える力強く勇敢な女神たち「ワルキューレ」になぞらえ、作品を《ワルキューレ ミス ディオ―ル》と名付けた。彼女の作品の特徴である裁縫やかぎ針編み、レース、刺繍のほかに、メゾンのアーカイブからインスピレーションを得たフローラルモチーフがまだら模様に広がるファブリックを使用し、「ミス ディオール」と呼ばれたカトリーヌの花と、クリスチャン・ディオールが愛してやまなかった自然の風景にオマージュを捧げた。
ヴァスコンセロスは、「カトリーヌは戦士であり、女神であったと思います。今回の作品には、私の祖母や叔母から習った様々な手法を盛り込みました。ショーに作品が調和するよう、コレクションで用いられている柄に合わせたファブリックを採用しています」と語る。
パリ・チュイルリー公園内のショー会場に設置された作品は、全長24メートル、高さ7メートル、重さ20トンにもなり、植物にもタコにも似た不思議な造形は、どこかダークな雰囲気ともあいまって、シュルレアリスムの絵画を彷彿させる。
ヴァスコンセロスは作品について、ロイター通信にこう語っている。「別世界、別次元にある魔法の庭をイメージしています。現代美術とファッションがこのようなつながりを持つことは、非常にユニークなことです」
ヴァスコンセロスは2013年にもディオールとコラボレーションを行っており、当時は、数百本のディオールの香水瓶を使った大きなリボンの作品を制作した。(翻訳:編集部)
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