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草間彌生の作品が一晩で約30億円のオークション売上。勢いを増すカルト的人気

4月5日に香港で行われたサザビーズのイブニングセールに、過去20年間に制作された草間彌生の作品5点が出品され、合計2290万ドル(約30億円)を売り上げた。草間作品の最高落札額を更新したものもある。

草間彌生《My Heart is Flying》(2018) Photo: Courtesy Sotheby’s

この日は、モダンアートと現代アートの2つのオークションが連続して行われた。出品作家には草間彌生など大物アーティストが名を連ね、総売上高は15億2000万香港ドル(約254億円)に達した。また、11人の作家が過去の最高落札額を塗り替えている。

草間のスタジオが2014年に制作したブロンズ製の特大カボチャの彫刻《Pumpkin(L)》は、サザビーズ・アジアの会長、ニコラス・チョウとの電話入札で、6264万香港ドル(約10億5000万円)で落札。これは日本人作家による彫刻の落札価格の新記録だ。また、黒い水玉模様のカボチャの彫刻《A-Pumpkin(BAGN8)》にも、5517万香港ドル(約9億2000万円)の高値がついた。

これを超える注目を集めたのは、2018年の作品《My Heart is Flying to the Universe》。有名な大型ミラールームのインスタレーション「Infinity Mirror Room」のシリーズに似た、LED照明付きミラーボックスのような作品だ。外側には顔と同じくらいの穴が開いていて、鑑賞者は中をのぞき込んで作品を見る。人気のある「Infinity Mirror Room」とは違い、作品の中に入ることはできないが、それでも2590万香港ドル(約4億3000万円)という高値で落札された。

アジアで開催されたオークションで、こうした作品が出品されたのは今回のサザビーズが初。出品者の名前は明かされていないが、作品の来歴によると、もとは大手ギャラリーのデヴィッド・ツヴィルナーから購入されたものだ。事前に登録していた複数の入札者が、サザビーズの担当者とオンラインや電話で連絡を取りながら競り合った末、予想落札価格の2585万香港ドルを少し超えた価格で落札された。

この価格は、草間の作品としては最高水準となる。現在のところ、2022年にフィリップスのオークションで1090万米ドル(現在のレートで約14億5000万円)で落札された絵画作品《Infinity Nets》が草間作品の最高記録だ。

94歳の草間彌生は、近年アート市場でさらに人気が高まっている。2020年にアートライターのグレッグ・アレンは、世界中のギャラリーや美術館における草間のカルト的な地位を「クサマ・インダストリアル・コンプレックス(草間の産業複合体)」と呼んだ。現在、香港の現代美術館M+で草間の回顧展が開催されているほか、ルイ・ヴィトンとの大規模なコラボレーションが世界各地で展開されている。

オークションで草間作品が高値をつけたことで、香港のアート市場の最新事情がより鮮明になったとの見方もできる。先日発表されたばかりのアートバーゼルとUBSによるアート市場リポートのデータによれば、2022年のアジアのアート市場は不調だった。中国政府の厳しいゼロコロナ政策で、中国市場の勢いが削がれたことが要因と見られている。アジア市場での2022年の美術品売上高は前年比14%減の112億ドル(約1兆5000億円)と、2009年以来の最低水準にまで落ち込んた。(翻訳:清水玲奈)

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