【Art Market 2023速報】世界のアート市場は9兆円に──2022年はハイエンドが市場を牽引、NFTアートの取引額は半減
アートバーゼルとUBSが最新レポート「Art Market 2023」を発表した。これによれば、2022年の世界のアート取引額は678億ドル(約9兆75億円)で、2018年の水準に回復したことになる。
アートバーゼルとUBSによる「Art Market 2023」は、アメリカ、イギリスほかヨーロッパ、アジアに拠点を置く数百の国際的ギャラリー、および、100万ドル(約1億3000万円)以上の資産を持つ富裕層のアートコレクター2,700人を対象に実施した調査をもとに作成されている。
この最新レポートによると、2022年の世界のアート取引額は678億ドル(約9兆75億円)。この数字は、2021年に報告された2022年の予想(615億ドル)を3%上回り、2019年の640億ドルから6%増加、2018年と同等の水準に戻ったことになる。
10年以上にわたりこのレポートを執筆している文化経済学者のクレア・マッキャンドルーは、2022年の売上高はパンデミック前の水準を上回ったものの、ディーラー、オークションハウス、その他の取引関係者にとっては「緩やかな成長」だったと表現している。
調査によると、アメリカは引き続き美術品取引における最大市場の地位を維持し、全体に占めるシェアとしては昨年から2%増となる45%を記録。次いで、2021年に3位だったイギリスが18%を占め2位に返り咲いたのに対し、中国は昨年度から3%シェアを落としたため、今年は17%で3位となった。
売上高で見ると、アメリカは昨年度から8%増加となる約302億ドル(約4兆円)、イギリスは5%増加し119億ドル(約1兆6000億円)に達した。中国市場については長引くロックダウンの影響でビジネスが停滞し、2021年度から14%も数字を落とし、112億ドル(約1兆5000億円)で着地した。
弱肉強食の傾向が強化
マクアンドリューはUS版ARTnewsの取材に対し、「アートフェアなどのイベント復活」が、特に高価格帯の美術品取引額の増加を後押ししたとコメント。さまざまな要因が今回の結果につながったとしつつも、7桁の美術品を扱う販売者に億万長者の富が集中したことが大きい、と加えた。事実、100万ドル(約1億3000万円)を超える作品がそれ以下の価格帯に比べ特に好調であり、ビッグプレイヤーが市場を支配するという長期的な傾向を如実に表していると言える。
ギャラリーの売上は372億ドル(約5兆円)に達し、2021年から7%の増加となった。特に大規模なギャラリー(年間1000万ドル=約13億円以上の売上高を誇るギャラリー)の年間平均売上高が19%も増加。一方、年間売上高が25万ドル(約3300万円)以下の小規模ギャラリーは、売上高が前年から3%減少し、苦戦を強いられている。その背景には、運営や物流コストの上昇により、ディーラーやコレクターからの値引き要求など、取引に対する圧力の高まりがある。さらに、中小規模のディーラーの大半は、新規購入者の売上減少という結果になった。
また、パブリック・オークションの売上は306億ドル(約4兆円)で2021年から2%減となったものの、パンデミック前の2019年を11%上回る結果となった。オークションに占める個人売買は38億ドル(約5000億円)で、2021年の41億ドルから減少した。
マクアンドリューは、こうしたいくつかの落ち込みはあったものの、例えばオークションハウスでポール・アレンの遺品が総額15億ドル(約2100億円)を売り上げるなど、注目度の高い1000万ドル(約13億円)超の作品販売数が12%増加したという数字が示す通り、市場は引き続きハイエンドが牽引しているため全体としては好調だと総括。その反面、低価値帯の美術品については、2021年から2022年にかけて販売数が減少したと加えている。
さらに報告書によれば、アート関連のNFTは2021年のブーム後、最も激しく下落。オンラインでのNFT販売は2021年の29億ドル(約3850億円)から15億ドル(約2000億円)へと半減する結果となった。(翻訳:編集部)