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  • 2022.07.05

難しい選択:やっぱりヴェネチア・ビエンナーレに行くべき?<自己診断テスト>

ニューヨークを拠点とするアート事業のコンサルティング会社「Chen & Lampert(チェン&ランパート)」の設立者2人による自己診断シリーズ。今回のテーマはヴェネチア・ビエンナーレです。

コロナ禍で開催が1年延期された第59回ヴェネチア・ビエンナーレが4月に幕を開けた(会期は11月27日まで)。メイン会場のテーマは「The Milk of Dreams(ミルク・オブ・ドリームス)」で、緊迫した時代を控えめながらシュルレアリスム的に捉えた展示は高く評価されている。

あなたの友人や同僚、SNS上の知り合いは、こぞってイタリアに集まり、楽しげな旅の写真や動画をアップしているだろう。だから、もう何度もビエンナーレの様子は目にしているかもしれない。家のソファでウクライナやサル痘のことを心配しながら、みんながゴンドラに乗ったり、豪華なディナーを楽しんだり、ビエンナーレのパビリオンですばらしいアートを鑑賞しているのを目にすると、自分だけが取り残されたようで不安になるのでは?

そうして網目のような運河やエキストラバージンオリーブオイルのことを思い描いているうちに、飛行機のチケットを買ってしまいそうになってもおかしくない。でも、本当にヴェネチアまで行くべきかどうかを決めるのに、まずは次のテストで診断してみてはどうだろうか。

1. ビエンナーレに一緒に行くアート友だちとして理想的なのは?

a) 口髭をはやしてボートネックTシャツを着た、いかついゴンドラ漕ぎ
b) 楊枝をくわえ、目を光らせて人のポケットをうかがうスリ
c) クロックスを履き、グウィネス・パルトロウを伴った、釈放されたばかりのセレブシェフ、マリオ・バターリ(*1)


*1 グウィネス・パルトロウとマリオ・バターリは、料理ドキュメンタリー番組「Spain... On The Road Again」で共演している。


2. あなたにとって必見の国別パビリオンは?

a) ウクライナ
b) イータリー(*2)
c) レゴランド


*2イタリア食材店の名前(EatとItalyの造語)


3. あなたが見に行く展覧会では、女性アーティストは最低どのくらい含まれているべき?

a) 10%
b) 50%
c) 90%


4. まだ目立ったゴタゴタが起きていない今回のビエンナーレで、何かをキャンセル(追放)するとしたら、何に文句をつける?

a) 国際的に制裁措置が科されているのに、オリガルヒのヨットが展示されていること
b) レストランで水が有料なこと
c) ルネサンスの絵画や彫刻が性器だらけなこと


5. 2022年にふさわしい現代アートの戦略として、シュルレアリスムに対抗できるのは?

a) 気象災害、第3次世界大戦、コロナとサル天然痘のダブル感染拡大から目をそらすためのブルジョワ的なショー
b) ホイットニー・ビエンナーレが同じテーマに取り組むこと
c) ナッツ抜きのペーストをかけたグルテンフリーのパスタ


6. 夕食の席で自分が気に入らなかった展覧会をみんなが絶賛している時、どんな質問で話題を変える?

a) 「アート・イン・アメリカ(Art in America)」誌のあの値段、信じられなくない?
b) 駅にあるスバーロのガーリック・ノッツ、もう食べてみた?
c) 私がベスパに乗ったらどう見えるかな?


7. アメリカ館でシモーヌ・リーの作品を見ていたら、以前あなたにスタジオ訪問を依頼しながら結局放置したギャラリストに会った。どうする?

a) ピエロ・マンゾーニの缶をかたどった作品《Merda d'artista(芸術家のクソ)》を開けてやる。
b) おばあちゃんから学んだイタリアの身振りを使って、「ウガッツ!(イタリア語でクソ!)」と叫ぶ。
c) シチリアン・マフィアの仲間を雇って、(映画「ゴッドファーザー」に出てきたたように)馬の頭をホテルの部屋に運ばせる。


8 朝食中に、戦後ドイツを代表する画家、アンゼルム・キーファーについての会話を耳にした。あなたはどう言って会話に割って入る?

a) 「ジェラートのパビリオンは、思っていたよりずっと良かったですよ」
b) 「偶然ですが、うちの画廊ではアンセルム・キーファーを扱っています。今、50パーセントオフのサマーセール中なんです」
c) (強いイタリアなまりで)「観光客がいなければ、ヴェネチアは最高なんだけどね」


9. 次のうち、イタリアのカクテルでないものはどれ?

a) ベルニーニ
b) ベニーニ
c) ベリーニ


10. ビエンナーレを見たいという気持ちを絵文字にしたら、次のうちどれ?




採点とアドバイス

次の表で質問ごとの点数を集計し、ポイントごとのアドバイスを参考にしてみよう。


10–16点

あなたは、空港の長い列や汗だくの人ごみを想像し、パゾリーニ監督の「ソドムの市」の一場面で唱えられる「マンジャ!マンジャ! マンジャ!(イタリア語で、食べろ!という意味)」という呪文のような言葉を思い浮かべてはいないだろうか。冷凍のチーズパスタをレンジでチンして、ネットでjpeg画像を見まくれば、家にいても現地にいったようなワクワク体験ができるはず。

17–23点

ヴェネチアに行くには丸1日かかるし、費用も数千ドルだ。でも、ドミノ・ピザなら30分程度で10ドル以下のピザを配達してくれる。あなたには本当に遠くまで旅行に出る余裕があるだろうか? もしかしたらガッカリするかもしれない冒険にお金をかける前に、自分の通帳やコレステロール値と相談してみよう。

24–30点

飛行機に乗るのは、コロナ禍以来あまり楽しめないものになってしまったが、あなたには旅のわずらわしさに対処する気力があるようだ。いよいよソファから離れ、満開のアートの世界を体験するときが来た。ヴェネチアでツブ貝をたらふく食べた後は、アートバーゼルでスイスの有名なソーセージ、ランドイェーガーを食べ、ドクメンタでブレッツェルを食べれば、今夏の3大アートイベント全制覇だ。

(翻訳:平林まき)

※本記事は、米国版ARTnewsに2022年6月22日に掲載されました。元記事はこちら

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