ドレスにライオンの頭！ シュルレアリスムに原点回帰のスキャパレリに賛否両論

スキャパレリのクリエイティブ・ディレクターを務めるダニエル・ローズベリーは、ショーの前に発表したプレスリリースの中で、2023年春夏オートクチュール・コレクションは、ダンテの叙事詩に描かれた地獄のイメージに着想を得たと明かしている。その言葉通り、このショーでは、ライオン、ヒョウ、雌オオカミという、地獄篇に登場する3種類の寓意的な動物がリアルに表現されていた。

会場には、カイリー・ジェンナーなどのミューズたちが集結。動物の頭を本物そっくりに再現したオブジェをあしらった細身のドレスやコートに身を包み、フロントロウを彩った。歌手のドージャ・キャットは、頭を剃り上げ無数の赤いクリスタルを肌に付けた真っ赤な悪魔のような姿で登場し、他のゲストたちの度肝を抜いた。

ランウェイ上では、ナオミ・キャンベルがフェイクの狼の頭部をあしらったコートを纏い、裸の上半身に金色の塗料を塗ったモデルや、金色のメイクを顔にほどこしたモデル、金属の彫刻のようなマスクをつけたモデルが登場。こうした演出は、メゾンの創設者であるエルザ・スキャパレリと、彼女が1930年代に交流したマン・レイ、サルバドール・ダリ、メレット・オッペンハイムなど、シュルレアリスムの著名アーティストたちへのオマージュだ。

昨年、パリの装飾美術館で開催されたスキャパレリの回顧展でも、シュルレアリストたちとのコラボレーションが取り上げられていた。人間の身体と動物を融合させたような奇妙な衣服を生み出したコラボレーションからは、スキャパレリが人々に衝撃を与えようとしていたことがよくわかる。

今回のショーはまた、シュルレアリスムよりも古い時代の美術作品に登場する、獲物となった動物へのオマージュでもある。しかし、動物の頭を模したオブジェをあしらった衣服は多くの人々を動揺させ、狩猟を美化しているという批判も。

これに対し、意外なところから擁護の声が上がっている。動物愛護団体のPETAが、それはこのコレクションの意図するところではないと指摘したのだ。そもそも美術館には、富の象徴として狩の獲物を描いた絵がたくさん飾られている。オランダの画家たちが盛んに描いたこうした作品は、今も人気が高い。

ブルックリン美術館のファッション＆マテリアル・カルチャー部門のシニアキュレーター、マシュー・ヨコボスキーは、「本物の動物と同じ大きさの剥製風ブローチは、モデルの頭よりも大きく肩の上に鎮座していた。これは観客の度肝を抜こうとするスキャパレリの特徴をよく表している」と言う。

ヨコボスキーはまた、こう評している。「多くの企業が毛皮の使用を控えてフェイクファーを使っている時代に、本物そっくりで実物大の動物の頭部がクチュールのランウェイに登場したことは衝撃的だったが、それこそがこのブランドの流儀というものだろう」

以下、コレクションのルック画像を紹介する。（翻訳：野澤朋代）

1. 黒いコートに動物のフェイクヘッドを貼り付けたナオミ・キャンベル

2. ライオンのフェイクヘッドが付いた黒のドレスでスキャパレリのショーに出席するカイリー・ジェンナー

3. 白ヒョウの頭部が付いたドレス

4. 上半身をゴールドでペイントしたモデル

5. オフホワイトのアンサンブル、顔にゴールドペイント

6. ショー会場に全身赤ずくめで登場して注目された、歌手のドージャ・キャット

7. 丁寧に仕立られたベルベットドレス

8. オレンジ色のビーズが敷き詰められた、まるで彫刻のようなドレス

9. 仮面を装着したモデル

10. メタリックな素材を使った、立体作品のようなドレス

from ARTnews

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